オースティンの遂行動詞の分類とサールの発話内行為の類型について

オースティンの遂行動詞の分類

  • Austin, John Langshaw. How to do things with words. Oxford university press, 1962.

 

Austinは、上記の本で、この前の記事で説明した発話内行為を構成する遂行動詞を以下の5つに分類しています。(p. 150)

  • Verdictives(判定宣言型)― acquit, hold, calculate, describeなど
  • Exercitives(行為拘束型)―appoint, dismiss, nominate, vetoなど
  • Commissives(権限行使型)―promise, vow, pledge, covenantなど
  • Behabitives (態度表明型)― apologize, thank, deploreなど
  • Expositives(言明解説型)― affirm, deny, emphasize, illustrate, answerなど

なお、Austinは、これは最終的な分類ではなく、あくまでたたき台として作成したものと述べています。

 

Searle(サール)の発話内行為の類型

  • Searle, John R. “A classification of illocutionary acts1.” Language in society 5.1 (1976): 1-23.

John Rogers SearleはAustinのスピーチアクト理論を発展させた学者ですが、上記の論文で、Austinの遂行動詞の分類を批判しています(p. 8-p.9)。

まず、Austinは遂行動詞の分類が発話内行為の分類になると考えているような節があるとSearleは指摘し、これには根拠がないと述べています。つまり、遂行動詞=発話内行為になるわけではないといっています。

また、動詞の分類方法自体も不明瞭で一貫していないと述べ、分類間の重複や分類内での別種の動詞の混在などの問題点もあげています。

Searleは発話内行為をその目的に基づいて以下の5つに分類しています。

  • representatives (assertives)(断定・断言型)―あることが真実であると話し手に表明させるもの
  • directives(行為指示型)―聞き手に何かをさせようとするもの
  • commissives(行為拘束型)―話し手の将来の行為を約束するもの
  • expressives(感情表現・表明型)―心理的状況を表現するもの
  • declarations(宣言型)―発話することにより新しい制度上・慣習上の事態をもたらすもの

なお、commissivesという用語はAustinも使用していますが、Austinとは使用法が違うと言っています。

日本語の語用論についての本

  • 町田健編・加藤重広著 (2004). 日本語語用論のしくみ. 研究社

上記の各分類の和訳についてはこの本のp. 44-45を参照しています。発話類型の和訳について調べているうちに、この本にたどり着きました。関連部分を読んでみましたが、AustinやSearleの違いなどが簡潔にまとめられており、大変勉強になっています。