言語政策としてのネオリベラリズムというPiller and Cho (2013)の論文を読みました。

Ingrid Pillerについては随分前に紹介しました(リンクはこちら)。

日本語でも彼女の著書の訳書が出ています。

  • ピラー, イングリッド (2014)「異文化コミュニケーションを問いなおす: ディスコース分析・社会言語学的視点からの考察」創元社

今回は彼女が Jinhyun Choと共著した、以下の短い論文を読みました。

  • Piller, Ingrid, and Jinhyun Cho. “Neoliberalism as language policy.” Language in Society 42.01 (2013): 23-44.

この論文では、韓国の理工系のエリート校のKAIST(韓国科学技術院)を例に、ネオリベラリズムが大学等の隠れた言語政策になっているといっていました。

他の国でもそうですが、近年大学の競争力というのが非常に重視されていて、大学ランキングなどを挙げることなどに躍起になっている大学も多いです。

KAISTでは英語での授業実施や、成績不良の学生からの授業料を徴収など、大胆な大学改革を進めたのですが、こういった改革に伴う過度の競争からか2011年には複数の学生・教授が自殺したことでニュースにもなりました。

この論文では、英語も大学の評価を上げるために、大学が競争しなければならないものの一つに組み込まれているといっていました。さらには、グローバルコミュニケーションや学術的にも英語が使用されていることを理由に、こうやって英語で競い合うことが正当化されているともいっていました。(p. 39)