クロスカルチャル・コミュニケーション(Cross-cultural communication)や異文化間コミュニケーション(intercultural communication)などという用語がよくつかわれていますが、その違いについて調べてみました。
参考にしたのは以下の論文です。
- Scollon, Ron, and Suzanne Wong Scollon. “27 Discourse and Intercultural Communication.” In Deborah Schiffrin, Deborah Tannen and Heidi E. Hamilton (eds.) The handbook of discourse analysis (2001): 538-547.
クロスカルチャル・コミュニケーションと異文化間コミュニケーションを区別するのは難しいのですが、Scollon and Scollonは以下のように分けていました。
1. Cross-cultural Communication(クロスカルチャルコミュニケーション)
クロスカルチャル・コミュニケーションというのは、ある文化グループと別の文化グループのコミュニケーション上の特徴を調査する目的のものが多いようです。(p. 539)
日本人ははっきり物事を言わない、アメリカ人は直接的に言うなどといったような、(真偽は別として)文化グループに特徴的な傾向を調査するもののようです。
このとき、「日本人」と「アメリカ人」が接触することはなく、この2つのグループについて別々に調査すると言ったものが多いようです。
2. Intercultural Communication(異文化間コミュニケーション)
異文化間コミュニケーションは、別個の文化グループが存在するという前提のもと行われるという点では、クロスカルチャル・コミュニケーションと同じですが、違いは、文化背景の違う人達が接触している場面でどのような言語がつかわれているかというのを観察している点だそうです。
日本のレストランで、韓国人観光客と日本人接客係との間の対話を分析し、どのような誤解が生じているかなどを研究するなどがその例なのかなと思います。この場合、「韓国人」「日本人」と別個の文化グループを推定していますが、この2つの人達が実際にコミュニケーションを行っているという点で、クロスカルチャル・コミュニケーションとは違うといっています。
3. interdiscourse Communication(ディスコース間コミュニケーション)
Scollon and Scollonはディスコース間コミュニケーションというのも挙げていました。これは上記のような、よく言われるような「異本人」「韓国人」などといったグループの属性を所与のものとは考えず、対話の中で作り上げられていくとみる立場のようです。
この立場では、対話の中でどのようにアイデンティティや文化が形成されているのかを研究するようです。(p. 544)(詳しくはこちら)