翻訳学における等価の問題について②

昨日の等価の問題についての続きです。参考にしたのは入門書紹介の記事でも紹介した、『翻訳学入門』の第3章(p. 56-84)です。(下記の記載も左記のページを参考に、私が理解した範囲で記載しています。上記の本にはもっと詳しく書いてあるので、詳しくはそちらを参照ください。)

  • ジェレミー・マンディ(著) 鳥飼玖美子(監訳). “翻訳学入門.” みすず書房 (2009).

原文はこちらです↓(新しい版ですが)

  • Munday, Jeremy. Introducing translation studies: Theories and applications. Routledge, 2016.

 

ニューマーク(1981, 1988)

Paul Newmarkは、等価効果、つまり原文と翻訳文が同じになるというのは幻想に過ぎず、翻訳というのは常に原文を尊重するか、目標言語の自然さを尊重するかの間で問題が生じるものだといっているようです。

その上で、以下の2つの翻訳方法を挙げています。

  • コミュニケーション重視の翻訳(communicative translation)
    原文の読み手が受けるものとできるだけ近い効果を与えるもの
  • 意味重視の翻訳(Semantic translation)
    原文の意味・文法構造にできるだけ近くしたような翻訳

意味重視の翻訳は一見、直訳と似ているように見えますが、直訳は少し違うようです。意味重視の翻訳とは、できるだけ原文を伝えようとすることを重視するため、比喩などがあれば、翻訳者が解釈し、注釈などで説明などもするようです。(直訳だとそういったことは基本しません)

ただ、等価効果は幻想にすぎないという重要な指摘はしているのですが、コミュニケーション重視の翻訳・意味重視の翻訳は昨日紹介したナイダの形式的等価・動的等価と似ているためか、そこまで議論もされていないようです。

コラー(Koller)(1979)

Werner Kollerは等価のタイプとして以下の5つをあげたそうです。

  • 指示的等価(denotative equivalence)
  • 暗示的等価(connotative equivalence)
  • テキスト規範的等価(text-normative equivalence)
  • 語用論的等価(pragmatic equivalence)

この等価という概念は批判も多いそうですが、今も特に実践では重要な概念だそうです。