参考にした本
ヤーコブソンの3種類の翻訳について調べてみました。
参考にしたのは、入門書紹介の記事でも紹介した、『翻訳学入門』の第1章のp. 5-7です。
- ジェレミー・マンディ(著) 鳥飼玖美子(監訳). “翻訳学入門.” みすず書房 (2009).
原文はこちらです↓(新しい版ですが)
- Munday, Jeremy. Introducing translation studies: Theories and applications. Routledge, 2016.
翻訳とは何か
翻訳とは一体何か、厳密に考えてみるとかなり難しい問題で、人によっては、言語を使うこと自体が「頭の中にある非言語の世界を翻訳しているから翻訳だ」と言っている人もいるようです(詳しくはこちら)。
また、一口に「翻訳」といっても、翻訳という分野一般を指す場合や、訳出されたテキスト、翻訳プロセスを指す場合など様々な意味があります。
ヤーコブソンの3種類の翻訳
翻訳について定義するときに、よく引用されるのはロシア系アメリカ人の言語学者のRoman Jakobson(ヤーコブソン)です。
ヤーコブソンは1959年の “On linguistic aspects of translation” という論文で以下の3つの種類を挙げました。
言語内翻訳(intralingual translation)
言語内で言い換えたり、何かの文章を要約したり、テキストを書き換えたりすることを指します。
例えば、「口頭というのは口を使って何かを言うことだ」と言い換えていったり、今やっているブログのように本をまとめたりすることも言語内翻訳になるかと思います。
言語間翻訳(interlingual translation)
いわゆる私たちがよくイメージする翻訳のことで、ある言語から別の言語に翻訳することです。
記号間翻訳(intersemiotic translation)
書かれたテクストを音楽、映画、絵画などの別の非言語の記号(semiotics)にすることで、小説のドラマ化や映画化や、聖書を基にした絵画などが含まれます。
ちなみにこの「記号」というのは「記号論」から来ている概念で、日本語では捉えにくい概念なのですが、基本的に言語、画像、ジェスチャー、音など、我々が知覚する言語・非言語のものすべてと考えていいかと思います。
もっと興味のある方は
ちなみに、翻訳学でよく引用される論文をまとめて読みたい人には以下の本がおすすめです。
- Venuti, Lawrence. (Eds.) The translation studies reader. Routledge, 2012.
この本は翻訳学でよく引用される主要な論文が年代別に収録されていて、論文を探す手間も省けるので、重宝しています。
上記のJakobsonの”On linguistic aspects of translation”もこの本に含まれています。