コミュニケーション能力について②: Canale and SwainとCelce-Murcia

昨日の続きで、コミュニケーション能力について少し調べてみました。

参考にしたのは、以下の本の第6章です。(p. 110-131)

  • Hall, Joan Kelly. Teaching and researching: Language and culture. Routledge, 2013.

Canale and Swain (1980)のコミュニケーション能力

Hymesがコミュニケーション能力を提唱してから、外国語・第二言語教育でもコミュニケーション能力が取り入れられていきます。Canale and Swain (1980)は、コミュニケーション能力を外国語・第二言語教育にも応用した第一人者で、コミュニケーション能力の要素として、以下の3つを挙げています。

  • grammatical(文法的能力)-文法・語彙
  • sociolinguistic(社会言語的能力)-実際の言語使用に関する知識
  • strategic(ストラテジー的能力)-コミュニケーションができなくなったときのストラテジーに関する知識

Canale (1982)のコミュニケーション能力

Canale (1982)では、上記の3つに加え、以下の1つが追加されています。

  • discourse competence(談話能力)-単独の文だけではなく、まとまった談話を作り出す力

Canale and Swainの枠組みは、1990年半ばまで言語教育のカリキュラム作成において多大な影響を与えていたそうです。

Celce-Murcia, Dornyei and Thurrell (1995)のコミュニケーション能力

Celce-Murci, Dornyei and Thurrel(1995)は上記のCanale (1995)に変更を加え、以下の5つの要素を挙げています。

  • sociocultural competence(社会文化的能力)-社会言語的能力を社会文化的能力に変え、文化的背景知識なども含めています。
  • linguistic competence(言語能力)-文法的能力を言語能力と変更しています。
  • discourse competence(談話能力)
  • actional competence(アクション能力)-自分の意図を伝え、相手の意図を理解する能力
  • strategic competence(ストラテジー的能力)

また、Celce-Murcia, Dornyei and Thurrel(1995)は上記の5つの要素の関連性も図にして提示しています。

詳しくは論文をご覧ください。無料でアクセスできるようになっています。

Celce-Murcia (2007)のコミュニケーション能力

Celce-Murcia (2007)は、上記のモデルを修正しました。actional competenceを削除した上で、以下の2つの能力を加えました。

  • formulaic competence(決まり文句能力)-英語でいうと「of course」「all of a sudden」など、よく使う決まり文句や表現に関する知識
  • interactional competence(インターラクション能力)-インターラクション能力は、以下の3つの要素を含みます。
    • actional competence(謝罪・依頼などの行動を適切に行う能力)
    • conversational competence(会話をはじめ、おわらせる能力、また、トピックを変える能力)
    • non-verbal/paralinguistic competence(ジェスチャーなどをうまく使う能力)

コミュニケーション能力に対する批判

現在ではコミュニケーション能力も批判を受けており、interactional competenceやsymbolic competence、complexity theoryなど別の概念も提唱されています。

興味のある方は以下の記事もご覧ください。