【言語学用語の整理】languagingについて調べてみました。

第二言語習得・教育研究でよく見るlanguagingという用語について調べてみました。

「languaging」は最初はBecker(1991)が使用したそうなのですが、以下のSwain (2006)などにより第二言語習得・教育の枠組みの中で使われるようになったそうです。ちなみに、Merrill Swainはoutput仮説を提唱したことでも有名ですね。

以下の章で詳しく説明されていました。

  • Swain, M. (2006). Languaging, agency and collaboration in advanced second language proficiency. In H. Byrnes (Ed.), Advanced language learning: The contribution of Halliday and Vygotsky (pp. 95–108). London: Continuum.

言語教育では、聴解・読解などの言語の受容に関する「input(インプット)」と、会話や作文など言語の産出に関する「output(アウトプット)」という言葉がよく使われます。このインプットとアウトプットというのは、言ってみれば、人が話したことや、聞いたことなど外から観察できる産物を示すものです。

Languagingというのは、Vygotskyの影響を受けた言葉で、頭の中にあるものを言語を通して発するという、認知面のプロセスに注目した表現のようです。外から見た状況ではなく、個々人の頭の中のプロセスに着目した用語のようです。

Swainはこのようにいっています。

Languaging, as I am using the term, refers to the process of meaning-making and shaping knowledge and experience through language (p. 98)
(本稿で使用される「languaging」とは、言語を通して意味を形成し、知識・経験を形作るプロセスのことである。)

言語はメッセージを伝達する道具だけにとどまらず、言語を通して人は考え、考え直し、ある経験に意味を与え、知識を作り上げていきます。こういった言語の役割に注目した言葉がlanguagingのようです。
少し前にtranslanguagingについての以下の本を紹介しました。(詳しくはこちら

  • García, O. and Li W. (2014). Translanguaging. Language, bilingualism and education. Hampshire, Palgrave MacMillan.

これも「languaging」から派生した用語のようです。