【言語学用語の整理】ブローカ失語症・ウェルニッケ失語症についての備忘録

昨日の記事の続きで失語症について少し調べてみたので、記録しておきます。

参考にしたのは以下の論文です。

  • Dick, F., Bates, E., Utman, J. A., Wulfeck, B.,Dronkers, N., and Gernsbacher, M. A. 2001. Language deficits, localization, and grammar: Evidence for a distributive model of language breakdown in aphasics and normals. Psychological Review 108(4), 759-788.

失語症は、基本的には左脳に障害があった場合に発生するそうです。

失語症にはいろいろ種類があるようですが、よく聞くブローカ失語症(Broca)とウェルニッケ(Wernicke)失語症についてのみ簡単に記しておきます。

①ブローカ失語症(Broca)
前頭葉のブローカ野が損傷を受けた場合に生じる失語症です。聞いて理解はできますが、うまく話せないという、言語の産出に関する失語症です。昨日の記事で失文法について触れましたが、失文法とよく結び付けられるのもブローカ失語症だそうです。

②ウェルニッケ失語症(Wernicke)
上側頭回の後部にあるウェルニッケ野が損傷を受けた場合に生じる失語症です。言語を聞いて理解することが困難になるそうです。

ちなみに、上記の論文では、ウェルニッケ領域は言語理解に関係し、ブローカ領域は言語産出に関係するなど、ある特定の脳の領域が、ある特定の言語機能と関係するというlocalization説があったそうなのですが、それに異を唱えていました。

上記のDick et al.は、①失文法の症状がブローカ失語症だけでなく、それ以外の失語症のケースでもみられ、一つの失語症のグループに限定されないこと、②「受容的失文法(receptive agrammatism)」というのはある特定の条件におかれた場合に(失語症でない)大学生にも見受けられることを指摘していました。それを基に、言語のような複雑な機能の場合、脳の1つの領域に簡単に結びつけられるものではなく、複数の領域が関与しているのではといっていました(「distributive model/approach」などと呼んでいました)。
失語症については新書も出ているようなので、読んでみたいですね。

  • 山鳥 重(2011)言葉と脳と心 失語症とは何か. 講談社