- 箕浦康子(編) 1999 『フィールドワークの技法と実際 マイクロ・エスノグラフィー入門』ミネルヴァ書房
この本の第5章「エスノグラフィーの作成」を読みました(p. 71-86)。
エスノグラフィーという用語も、3つの用例があるそうです(佐藤, 1992, 箕浦 1999, p. 71で引用)
- フィールドワークの結果をまとめたもの
- フィールドワークのプロセスそのもの
- 記述民族学
この章では「フィールドワークの結果をまとめたもの」としてエスノグラフィーをとらえていました。
このフィールドワークをまとめ、読者に提示していくという行為についてですが、1980年代からクリフォードなどの人類学者がこの「文化を書く」という行為の「客観性」に疑問を呈し、文化人類学では、研究者は再構成された現実しか見ていないのではという考えが強くなっていったそうです。
その結果、アンチテーゼとして、人物中心の民族誌(person-centered ethnography)や特定事象のエスノグラフィー(ethnographies of the particular)などが生まれたと言っていました(p. 79)。
この後者の特定事象のエスノグラフィーでは、「文化」という概念自身が、自分とは違う他者をつくりだすものだと批判し、「文化」ではなく、ローカルな場での一つ一つの事例に着目したマイクロ・エスノグラフィーを提唱しているようです。(p. 83)
また、研究者1人の声だけでなく、被調査者や類似の立場の他の人がどう解釈するかというmulti-voices method (Tobin, et al., 1989, 箕浦 1999, p. 81で引用)も使われていると言っていました。