昨日に引き続いて、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学のMichele Zappavignaの別の論文を読みました。
昨日も書きましたがZappavignaはソーシャル・メディアの言語について複数出版しています。
- Zappavigna, Michele. Discourse of Twitter and social media: How we use language to create affiliation on the web. A&C Black, 2012.
- Page, Ruth, et al. Researching language and social media: A student guide. Routledge, 2014.
今回読んだ論文は以下のものです。
- Zappavigna M, 2014, ‘Enacting identity in microblogging through ambient affiliation’, Discourse and Communication, vol. 8, no. 2, pp. 209 – 228, http://dx.doi.org/10.1177/1750481313510816
この論文ではアイデンティティに焦点を当てて、ツイッターなどの簡易ブログ(microblogging)サービスでユーザーがどのようなアイデンティティを構築し、演じているかを、探っていました。データとして使っていたのは、ユーザー1名のツイッターに関するコーパスと、ランダムなツイートを抽出したコーパスの2つで、分析手法は前回の論文と同じく評価理論(Appraisal theory)を使っていました。
ツイッターなどではユーザーはただ自分の感情をつぶやくというふうに思われることが多いようですが、Zappavignaは、そうではなく、ユーザーは直接関わることがない可能性も高い読み手と、ハッシュタグ(#)やインターネット・ミームを通して、社会的な絆(social bond)を結び、自分のアイデンティティを演じているといっていました。
具体的には、分析の結果、ユーザーがあえて自己を卑下したり(’self-depreciation’ bond)、何かに夢中な様子を出したり(’additction’ bond)、疲労困憊である様子を伝えたり(’frazzle’ bond)するという様子が、様々なコミュニティで見受けられたようです。
こういった自分の様子をハッシュタグなどをつけることなどで、(直接は知らず、関わることもないかもしれない)他の人からも検索可能とし、自らの感情をシェアすることで、社会的つながりや価値観を構築し、ソーシャルメディアでのアイデンティティと演じているのではといっていました。(読み手と必ずしも直接かかわる必要がないことから、Zappavignaはこれを「ambient identity(周囲的なアイデンティティ)」と呼んでいました。)