昨日の続きです。
↓紹介ビデオです。
3回目は、言語復興についてのケーススタディーとしてヘブライ語の例を挙げていました。講師のZuckermannの専門ですね(詳しくはこちら)。
ヘブライ語は言語復興でもっとも成功した例の1つとして挙げられています。
ただ、前回も述べていたとおり、言語復興の結果というのは相対的なものであって、古代のヘブライ語を復元したというより、様々な言語の影響を受けたハイブリッドの言語を再構築したといったほうが近いようです。
現代ヘブライ語は、主にイディッシュ語と(古代)ヘブライ語をもとに再構築(復興)された言語で、(イデッシュ語がヨーロッパ語族の1つということもあり)、ヨーロッパ諸言語の影響も大きく受けているようです。
発音や文法、語彙の面でその影響をいくつか挙げていて、なかなかおもしろかったです。
少しだけ紹介すると、現代ヘブライ語は語順が「主語-動詞-目的語」なのですが、古代ヘブライ語は語順が「動詞-主語-目的語」で、現代ヘブライ語とは異なるようです。
ヘブライ語復興の立役者となったアシュケナージ系ユダヤ人母語であったイデッシュ語は、他のヨーロッパ言語と同じく「主語-動詞-目的語」だったので、おそらくその影響ではと言っていました。
また、古代ヘブライ語は「f」と「p」の区別がないのですが、現代ヘブライ語は、これもまたイディッシュ語等の影響を受け、この2つを区別しているようです。
また、ヘブライ語の復興が成功した要因としては、話者の間のモチベーションが非常に高かったことと、ヘブライ語の文書が多数残っていたことが大きいといっていました。
さらに、当たり前といえば当たり前ですが、言葉そのもの意味より、それに関する含意のほうが復興させづらいなど、復興させにくいものと復興させやすい言語的特徴があるようです。
また、言語復興に関してZuckermannは以下の2つの原則を挙げていました。
- Founder principle(創設者の原則)
いくら人数が少なかったとしても、その言語復興に最初に携わった者の影響は非常に大きいという原則だそうです。現代ヘブライ語の場合、その復興に最初にかかわったアシュケナージ系ユダヤ人の影響が色濃く残っているといっています。
スペイン・ポルトガルからのセファルディ系のユダヤ人が最初に復興にかかわっていたら、現代ヘブライ語はまた違ったものになっていただろうといっていました。
- Congruence Principle(適合の原則)
いろいろな親言語の影響を受けて、言語は復興されていきますが、ある言語的特徴がその影響を及ぼす親言語に共通して存在していればしているほど、復興された言語の特徴として残りやすいという原則だそうです。
現代ヘブライ語の場合は、イデッシュ語やその他のヨーロッパ諸言語、(古代)ヘブライ語が親言語となって復興されましたが、ヨーロッパ諸言語・イデッシュ語など複数の言語に共通している特徴のほうが残りやすかったそうです。上に挙げた語順がその例かなと思います。