Lanza(2004)の親が子どもに使うディスコースストラテジーについて

バイリンガルの家庭などでは、子どもに対して親がどの言語をどう使うかが課題となります。Lanzaは、ノルウェー在住で、2歳の子どもがいるノルウェー語と英語のバイリンガル家庭2家庭を調査し、子どもが家庭で二言語を混ぜて使うようになるかどうかは、親のディスコースストラテジーと関係がある言っています。

  • Lanza, Elizabeth. Language mixing in infant bilingualism: A sociolinguistic perspective. Oxford University Press on Demand, 2004.

Lanzaは、親が使うストラテジーとして、5つのディスコースストラテジーを挙げています。

分かりやすいように、幼い子どものいる日英のバイリンガル家庭を例に考えてみます。その家庭では、父が英語・母が日本語で子どもに話しかけていたと仮定します。この家庭で、子どもが母に対して英語を使ったとき、母は以下のようなストラテジーを子どもに対してとることができます。

  1. Minimal  Grasp  strategy
    「意味がわからない」と他の言語(この場合は日本語)でいい、日本語で言い直すように求める。
  2. Expressed Guess strategy
    「それって、こういう意味?」と子供が言ったことを他の言語(この場合は日本語)で質問形で言いなおす。
  3. Repetition strategy
    子どもが英語で言ったことを、他の言語(この場合は日本語)で繰り返す(ただし、質問形ではない)
  4. Move on strategy
    そのまま会話を続ける(これにより、子どもは英語で話しても通じるということがわかる)
  5. Code-switching strategy
    親自身が英語・日本語の両言語を併用する。

Lanzaによると、以下のうち、(1)のminimum grasp strategyを使った場合、最もモノリンガル環境となり(すなわち、子どもが2言語を混ぜない)、その後は、上記の順番で、子どもが言語を混ぜて使うようになると言っています。つまり、親が両言語を併用していた場合(要するに(5)のCode-switching strategyをとっていた場合)、子どもも両言語を混ぜて使う(mixing)ようになるといっています。