サール(Searle)について
語用論ではよく聞くサール(Searle)のfelicity condition(適切性条件)について自分なりにまとめてみます。
特にどの論文を参考にしたということはなく、今までの知識の寄せ集めですのであくまで参考程度にしてください。
詳しく知りたい人は、原書が日本語でも出ています。
- Speech Acts: An Essay in the Philosophy of Language. JOHN R. SEARLE. Cambridge: The University Press, 1969.
- J.R.サール「言語行為―言語哲学への試論」:勁草書房
原書より概説本を読みたいという方は、語用論関係の入門書を読むとだいたいでてくるとは思います。
サールは、ジョン・L・オースティン(John. L. Austin)の提唱したスピーチアクト理論を発展させた、語用論では必ずといってもいいほど出てくる学者です。
Felicity Conditionについて
felicity conditionsは、ある発話が適切か適切でないかを判断する条件と理解しています。
たとえば
「Aさんは学生です。」
という発話があったとします。
この場合は、この発話の真偽は、実際にAが学生かどうかという客観的事実に基づいて判断することが可能です。
これに対し、
「明日までにお金返すね」
「時間に間に合わなくてごめんね」
「コピーお願いしてもいい?」
という発話があったとします。
これらの発話は、言語内容以外に、「約束」「謝罪」「依頼」などの実際の行為が伴うものです。
この場合、「時間に間に合わなくてごめんね」と言われても、実際にこの発話が「謝罪」の行為を伴うかどうかは、文脈を見て判断しなければなりません。
例えば、発話者が本当に「ごめんね」と思っていなかったら、謝罪にはなりません。
また、仕事上の顧客や目上の人に「ごめんね」なんていった場合は、謝罪というより、皮肉・挑発など違う意味を持つ可能性もあります。
実際には10分前についているのに「間に合わなくてごめんね」と言われても、謝罪にはならず、ただの勘違いになってしまいます。
真偽というよりも、文脈に応じて「適切かどうか」という点が問題になってくるわけで、ここで出てくるのがサールの適切性条件です。
発話の適切性を判断する条件
サールはこういった発話の適切性を判断する条件として以下の4つを挙げています。
- 命題内容条件(Propositional content condition)-発話の内容が満たさなければならない条件
- 準備条件(Preparatory precondition)-発話の場面・状況に関する条件
- 誠実条件(Sincerity condition)-発話者の意図に関する条件
- 本質条件(Essential condition)-発話行為の遂行に本質的となる条件
たとえば、上の「コピーお願いしてもいい?」という「依頼」を適切性条件に照らし合わせて考えると、以下のようになります。
- 命題内容条件(Propositional content condition)-未来のことを依頼していなければならない
- 準備条件(Preparatory precondition)-聞き手にコピーできる能力がある。現時点で聞き手がコピーしてくれるかどうかは100%定かではないなど。
- 誠実条件(Sincerity condition)-発話者は聞き手にコピーしてほしいと思っている。
- 本質条件(Essential condition)-発話者が聞き手にコピーさせようとしている。