「継承語学習者(heritage language learner)」と一口にいっても多様で、用語の定義(さらには「継承語」という名称そのもの)にもいろいろ議論があるようです。
今回は継承語学習者の分類分けを試みた以下の論文を読みました。
- Carreira, Maria. “Seeking Explanatory Adequacy: A Dual Approach to Understanding the Term.” Heritage Language Journal 2.1 (2004): n1.
今月末にはCarreiraが編者を務めた以下の本も出版されるようです。
- Olga Kagan, María Carreira, Claire Chik “The Routledge Handbook of Heritage Language Education: From Innovation to Program Building” (2017). Routledge
上記の論文では、既存の論文や自らの調査等を基に、継承語学習者について以下のように分類していました。
- エスニック・コミュニティへの帰属を重視するもの
継承語の能力というより、コミュニティへの帰属を重視する分類の仕方です。実際の話者が少なくなっているネイティブ・アメリカンコミュニティなどについて論じるときに使いやすい考え方と言っていました。 - 家系やエスニック背景を重視するもの
アメリカで育ったイタリア系の人や日系人など、(本人のその言語の能力の有無を問わず)ある言語(この場合はイタリア語・日本語)になんらかの家系的なつながりがあり、本人がその言語・文化に関わりたいという意志を持っている者(learner with a heritage motivationといっていました。) - 言語能力を基準とするもの
- 継承語クラスに入れられるような者
継承語の言語能力がある学習者で、マジョリティ言語と継承語の間でバイリンガルである者 - 第二言語のクラスに入れられるような者
継承語にある程度触れてはいるものの、「継承語クラス」に入れるには言語能力が足りないとみなされた学習者。この場合は、いわゆる第二言語クラスの学習者とのニーズも異なることなどから、既存の言語クラスに満足できないケースも多いと言っていました。
- 継承語クラスに入れられるような者
こういった分類を基に、各タイプの学習者に言語教育上どうすればいいのかという点にも言及していました。