- Liddicoat, Anthony J., and Angela Scarino. Intercultural language teaching and learning. John Wiley & Sons, 2013.
以下は、上記の本のp. 17-21を私なりに解釈したものです。
Cultures as national attributes
1つ目は日本文化、アメリカ文化、フランス文化のように、文化を国の特性(national attributes)とみなす考え方です。ときにマイノリティグループや社会階級などの国内の下位文化も含まれることもあります。
また、文化を「high culture」、つまり有名な文学・美術・音楽などと捉えた場合は、「英語文化」というと、英国、アメリカ、その他の英語圏の国々の文学を含みます。この場合、文化能力を高めることは、文学についての深い知識・理解を持つということになります。
Cultures as societal norms
2つ目は文化を社会規範と捉える立場です。文化人類学(代表的な学者はGumperzやHymesなど)の発展にともない1980年頃から提唱されるようになったもので、文化とは、慣習や価値観などを指すそうです。
この場合の文化能力とは、ある文化に属する人の行動パターンや、その背後にある文化的価値観を知ることになります。
Cultures as symbolic systems
3つ目は、文化を記号システムと考えるものです(いわゆる文化記号論的立場です。詳しくは文化記号論の本などをご覧ください)。この場合、人々は文化というレンズを通して、意味を構築し、解釈していくと考えられます。
この場合の文化能力とは、文化についての情報を得るというよりも、文化慣習を理解する際に使えるような、解釈能力を培うこととなります。
Cultures as practices
上の3つはどちらかというと文化を静的なものとみなしているのですが、最後の立場は文化を動的なもの捉え、個々人の行動、とくに言語の使用を通して、その場その場で構築されていくものとみる立場です。おそらく、この前紹介した「文化は動詞」と考える立場(Street 1993:25)と似ているのかなと思います。
Liddicoat and Scarinoはこれら4つの文化に対する見方は、独立して別個に存在しているわけではなく、関わり合っており、言語教育では、一つの見方にとらわれず、様々な角度から文化にアプローチすることが必要なのではと言っていました。