ディスコース研究といっても、この前紹介した批判的談話分析(critical discourse analysis)など、いろいろな形態があり、discursive psychology(ディスコース心理学)もその一つです。名前はよく聞くのですが、詳しくは知らなかったので、下記の動画で紹介されていたことをメモしておきます。(あくまで紹介動画なので、原著にあたったわけではありません。)
- Graham R Gibbs (2015) Discourse Analysis Part 1: Discursive Psychology. University of Huddersfield. アクセス:2015年7月
上記の動画によると、言説心理学は、ethnomethodology(エスノメソドロジー)という、日常の中の人々の活動に着目した手法に基づくものだそうです。
以下の「Discourse and Social Psychology」(1987)で、Potter and Wetherellは、言語というのは、ただ人が考えていることを表現するためのものだけではなく、言語自体が「現実を作り出す」役割があるといい、これを心理学研究に応用したようです。
- Potter, Jonathan, and Margaret Wetherell. Discourse and social psychology: Beyond attitudes and behaviour. Sage, 1987.
具体的には、日々の生活で人々がどう行動しているか、その中でどういう言語を使っているか(linguistic practice)、それがどんな効果があるかなどを見ているようです。
例としては、人を説得するという行動をするときに、あえて「I really like John but…」など前置きをするなどの言語ストラテジーを使うことなどがあるようです。こういった説明・説得・要求などの様々な行動と、そこで使われる言語ストラテジーを分析しているようです。
ある人が場面場面で全く正反対のことをいうこともあり、それも「矛盾している」で終わらせるのではなく「どうして全く逆のことを言ったのか」を、対話を分析しながら考えたりもするようです。
入門書としてはJonathan Potter and Derek Edwards (1992)などもあるようですね。
- Edwards, Derek, and Jonathan Potter. Discursive psychology. Vol. 8. Sage, 1992.
この前紹介した批判的談話分析との大きな違いとしては、批判的談話分析はパワー(権力)の問題がついて回るのに対し、言説心理学のほうは必ずしもそうではなく、個人の言語ストラテジーなどのミクロの視点に注目していることが多いようです。