マイケル・トマセロ(Michael Tomasello)
マイケル・トマセロ(Michael Tomasello)は著名な認知心理学者で、ドイツ・ライプツィヒのマックス・プランク進化人類学研究所の所長も務めているようです。
日本語にも多数翻訳されているようです。
- Michael Tomasello (2008) Origins of Human Communication. The MTT Press.(松井智子・岩田彩志訳「コミュニケーションの起源を探る」.勁草書房
- Tomasello, M. (2009). Why we cooperate. The MIT Press. (橋彌 和秀 (2013). 『ヒトはなぜ 協力するのか』 勁草書房
トマセロの講義「What makes humans unique?」
今回は時間があったので、Tomaselloの講義を聞きました。
- Michael Tomasell (2014) What Makes Humans Unique? Lecture at University of Cologne (Albertus Magnus Professor)
この講義では主にチンパンジーと人間の子供を比較した実験結果をいくつも出しながら、人間のユニークな点は何なのかを探っていました。
私の理解した範囲では、人間とチンパンジーを分ける点として挙げられるのが、人間の持つ社会認知面だそうです。
例えば、一緒に協力して何かを成し遂げた場合、その報酬を折半しようという子供は80%だったのに対し、チンパンジーの場合は、他のチンパンジーと協力して何かをしても、報酬を分け合おうというものはほぼいなかったようです(具体的な数字は忘れましたが、圧倒的に低かったようです。)また、人間の子供は、ただで報酬をもらおうとするいわゆるフリーライダーを嫌ったり、ある目標に向かって互いにコミュニケーションをとり合うといった行動も見られたようです。
また、役割Aと役割Bという2つの役割があった場合に、人間の子供は一度役割Aをしたら、その次の機会に(やったことのない)役割Bもできる子が多かったのに対し、チンパンジーはある場面で役割Aをしたら、次の機会も役割Aしかできず、役割Bはできなかったといっています。
こういった結果から、人間というのは「shared agency」、つまり、共通の目標をもって他者と協同活動がすることができ、これが人間のユニークな点なのではといっていました。また、他者と協力する中で、(同じように協力してる)他者と平等であろうとすること、そしてモラルに従って自分を統制しようとする動きも人間に見られる特徴だといっていました。
トマセロの最近の書籍
最近(2014年)はモラルに焦点を当てたこんな本も出しているようです。
- Tomasello, Michael. A natural history of human morality. Harvard University Press, 2016.