この本に入っている以下の論文を読みました。
- Maynard, Senko K. (2008). Playing with multiple voices. In Jones, Kimberly and
Ono, Tsuyoshi (Eds.). Style shifting in Japanese (pp. 91-129) John Benjamins
この論文では、雑誌記事やインターネット掲示板などで、書き手が「~だ」や「です/ます」、老人言葉や女ことばなどの様々なスタイルを混ぜ合わせて使用している例を複数挙げて、分析していました。
以下はたくさん紹介していた例のほんの一例です。ドラマ「太陽の季節」に関するBBSの書き込みです (p.120-121)(原文はローマ字だったので、日本語の表記は正確ではありません。)
「あんなに太陽がギラギラしていたのに
いつの間にか秋が深まっております。
みーちゃんこと、私からTBS様に最後のお願いに伺っております。
(中略)
がああああ!!
ここからが本題です。
滝川さんのこととなると、18歳、いや中学生、小学生かも?
(以下略)」
最初の方の非常に丁寧なスタイルや、「があああ!」や「小学生かも?」といったスタイル、「ここからが本題です」のような「です/ます」体など、複数のスタイルが一つの書き込みの中に含まれています。
このような例を通して、この論文では、書き手がこういった複数のスタイルを使用して感情を表現したり(emotivity)、ユーモアや皮肉を表現して創造的(creativity)にことばを使っていることに着目していました。
また、こうやって様々なスタイルを使っていくことで、多数の「声」を表しているのではないかといっていました。(これについては詳しくはこの前も紹介したバフチン(Bakhtin)の記事のヘテログロシアをご覧ください。)
今回の論文はデータの日本語がすべてローマ字表記だったので読みづらかったです・・・。日本語でも複数執筆しているようなので(詳しくはこちら)、日本語の本も読んでみたいですね。