この前の記事でも紹介した本を読了しました。
- 中島和子. マルチリンガル教育への招待: 言語資源としての外国人・日本人年少者. 2010.ひつじ書房.
現在のバイリンガル教育の現状だけでなく、バイリンガリズム教育に関する理論・研究結果もまとめられており、大変参考になりました。
全体の内容はこの前の記事に書いた通りですが、個人的に備忘録として気になった点をいくつかメモしておきます。
- 中島は、日本で小学校から英語を取り入れることにより、「国語力が低下」につながるという意見には批判的なようです。バイリンガリズム教育が培ってきた知見の一つに、異言語に年少時から接することで、言語そのものに対する理解(すなわちメタ言語知識)が育ち、それが今後の他の言語習得や国語力の増進にもつながるというものがあるそうです。こういった言語そのものに対する理解を促進するには、1つ以上の言語に触れる必要があるといっています。(p.139-140)
- 第4部の「マルチリンガルを育てる理論的背景」のところで、ワング=フィルモア(Wong Fillmore)とジム・カミンズについて詳しく説明していました。(p.193~)Wong Fillmore(ワング=フィルモア)は、アメリカのマイノリティー言語児童の研究で有名な学者ですが、彼女の「社会的文脈の中での言語習得モデル」についてはあまり知らなかったので、彼女の論文を機会があれば読んでみたいと思います。
- フィルモアも、第二言語習得をすることが第一言語喪失につながるわけではなく、第一言語が未修得の段階で、急激に第二言語に接触してしまうところに問題があるといっているようです(p.203)。第一言語を喪失し、第二言語の習得もうまくいかなかった場合、どちらの言語もうまく扱えないバイリンガルになる可能性が高いといっていました。この点については、昨日の記事とも関係しますね。
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