昨日の続きです。2つ目の講演はケルン大学のRalph Krügerによる「Working with Electronic Corpora in a Situated Translation course」という講演でした。
- Ralph Krüger. Working with Electronic Corpora in a Situated Translation course. IATIS Online/Onsite Training Event 14 April 2015. Cologne University of Applied Sciences
この講演ではコーパス活用法を概観していました。最近は、コーパスを使用できるということが、「翻訳能力」の一部として考える学者もいるようです。ただ、コーパスの使用というのは翻訳教育では使用が増えているものの、プロの翻訳者の間ではそこまで普及していないという現状もあるそうで、「短期間的には非経済的」(Aston 2009)という研究者もいるようです。
コーパスの利点としては、以下の本の著者に言及しながら、次のような点を挙げていました。
- Beeby, Allison, Patricia Rodríguez Inés, and Pilar Sánchez-Gijón, eds. Corpus Use and Translating: Corpus use for learning to translate and learning corpus use to translate. Vol. 82. John Benjamins Publishing, 2009.
- 教師の直感に頼らずに済む。
- 翻訳の役割というのは情報提供者から情報促進者へと変わってきている。(機械翻訳などが発達しているので、翻訳は情報そのものを伝えるというより、情報を分かりやすく提供するという役割にかわってきているということなのかなと思いました。)
- 教師が翻訳クラスで唯一の権威とならずに済む(教師の翻訳・意見が「絶対」ということがなくなるということだと思います)
後半では、以下の本などを引用しながら、ウェブの検索の便利なツールなどについても説明していました。
- Zanettin, Federico. Translation-driven corpora: Corpus resources for descriptive and applied translation studies. Routledge, 2014.
いろいろ検索方法など紹介していましたが、私に有用だなと思ったのは以下のサイトについてです。
- WebCorp Live (www.webcorp.org.uk/live)
このサイトは、ウェブを巨大コーパスとみなして、コンコーダンス(concordance)を表示してくれるそうです。日本語にも対応しているようです。
コンコーダンスについてはまた時間があるときに書ければと思います。