デービット・ブロック(David Block)については前にも少し紹介しましたが、今回はBlockの以下の短い論文を読みました。
- David Block (2013) The structure and agency dilemma in identity and intercultural communication research, Language and Intercultural Communication, 13:2, 126-147.
この論文ではagency(エージェンシー・主体性)とstructure(構造)の間の関係について扱っていました。
agency(主体性)というのは、社会構造に影響されるというのが通説になっています。例えば、ある人が「英語を勉強しよう」と主体的に思うのも、社会的な英語の地位等の社会的な構造に影響を受けると言われています。
ですが、Blockは(アイデンティティ・異文化コミュニケーション研究では)この2つの関係性はあまり十分に議論されてこなかったといっています。
Blockは、カール・マルクス、ウルリッヒ・ベック、アンソニー・ギデンズ、ピエール・ブルデューなどの社会学者がagencyとstructureがどう議論してきたかを概観したあとで、イギリスの社会学者のMargaret Archer(マーガレット・アーチャー)を紹介し、彼女はこのagencyとstructureの関係を正面から扱っているといっていました。
マーガレット・アーチャーの本でBlockの論文で引用されていたもの(一部)はこちらです。
- Archer, Margaret Scotford. Being human: The problem of agency. Cambridge University Press, 2000.
- Archer, Margaret S. Making our way through the world: Human reflexivity and social mobility. Cambridge University Press, 2007.
彼女は日本語でも紹介されているようですね。
- アーチャー、MS、佐藤 春吉訳 (2007)、 『実在論的社会理論一形態生成論アプローチ』青木書店
ちなみにBlockは、Archerのブルデューに対する批判には異論を唱えていました。
今すぐにではないですが、もしagencyについて研究することがあれば、このArcherの本も読んでみたいですね。