この前カナンダ語について少し触れましたが(詳しくはこちら)、言語保持・言語復興に関しては、この前亡くなったジョシュア・フィッシュマン(Joshua Fishman)(詳しくはこちら)が以下の本(1991, 2001)で8つの段階からなる「Reversing language shift(言語シフトを逆行させるプロセス)」を提唱しています。
- Fishman, Joshua A. Reversing language shift: Theoretical and empirical foundations of assistance to threatened languages. Vol. 76. Multilingual matters, 1991.
- Fishman, Joshua A., ed. Can threatened languages be saved?: reversing language shift, revisited: a 21st century perspective. Vol. 116. Multilingual Matters, 2001.
フィッシュマンの場合は、焦点が少数言語の保持・復興だと思うので、かなりの数の話者がいて、公的サービスでも使用されているカナンダ語とは事情が違うかもしれませんが、言語シフトを考えるときの枠組みとして引用されることが多いように思います。
ちなみに「language shift(言語シフト)」とは、経済・社会的理由等から、ある言語が使われなくなり(そして別の言語が使われるようになること)を意味します。日本の例だと、アイヌ語使用圏でのアイヌ語から日本語へのシフトなどが挙げられると思います。フィッシュマンはこの言語シフトの流れを逆行させ、少数言語を復興させるプロセスを示しています。
言語復興で成功した例としてよく挙げられるのはヘブライ語です。
ざっとですが8段階は以下のとおりです。段階1が一番上位です。(詳しくは上記の本をご覧ください)
段階8:少数言語を再構築・成人の間の学習(維持したい少数言語の体系化)
段階7:少数言語のコミュニティーでの使用(主に年配世代)
段階6:少数言語の家庭・近隣・コミュニティでの使用(言語の世代間継承)
段階5:少数言語でのリテラシー教育
段階4:学校教育での少数言語の使用
段階3:職場における少数言語の使用
段階2:地域のメディア・公的サービスでの少数言語の使用
段階1:高等教育、全国的なメディア・公的サービスで少数言語の使用
ちなみに段階4は段階4aと段階4bに分かれています。段階4bは多数言語のメンバーが運営する学校内での少数言語のクラス、段階4aは少数言語のメンバーが運営する公立学校になっています。