昨日紹介した論文(詳しくはこちら)と同じ論文誌「Theory of Social Behaviour」の同号の以下の論文も時間があったので読んでみました。
- Sammut, Gordon and Gaskell, George (2010) Points of view, social positioning and intercultural relations. Journal for the Theory of Social Behaviour, 40 (1). 47-64.
著者の1人のGeorge Gaskellはロンドンのロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の教授で、以下のような本も出版しているようです。
- Gaskell, George, and Martin W. Bauer, eds. Genomics and Society:” Legal, Ethical and Social Dimensions”. Routledge, 2013.
この論文では、価値観の違う集団間でどう理解し合えるのかという問題に当たっていました。こういった価値観の違う相手と理解し合う方法として対話がよく挙げられますが、ただ対話をするだけでは問題の解決にはならないと言われています。
接触仮説(contact hypothesis) (Allport 1954) という、 異なる集団間の偏見等は相手と接触する回数を増やせば減るという仮説があるのですが、この論文では接触することにより逆に不寛容などが助長することもあるなど接触仮説の反例も報告されていると述べています。
この論文ではこの接触の場面で鍵となるのが「perspective taking(相手の視点に立つこと)」だと言い、社会表象理論(Moscovici 1961/1976)に基づき、ある集団間の接触の場面で、個々人がどのような視点(point of view)を持ち、どういった視点がプラスの関係を構築できるのかを調べていました。
具体的には、「宗教は悪の根源だ」というドキュメンタリーについて、人々がどのような視点を持つかを調査していました。結果としてはmonological、dialogical、metalogicalという3つの視点があったといっています。
monological(一方的)とは、相手を否定すること(「相手が間違えている」ということ)です。
dialogical(対話的)は、相手の視点を尊重するが、自分の考えが真実であるという姿勢を崩さないこと(「宗教を信じない人がいるのは分かるが、私は信じる」など)です。
metalogical(メタ論理的)、自分の視点が絶対ではないと考え、相手の視点を取り入れる姿勢も見せることだそうです。
この論文によると3つ目のmetaloicalの視点が接触の場面において異なる価値観(社会表象)をつなぐ役割を果たすと言っていました。