文化能力の定義を試みるNostrand(1991)を読了。文化能力の定義はかなり難しそうです。

下記の本の中のNostrand, Howard Lee (1991)のチャプターを読みました。

  • lw Nostrand, Howard. Basic intercultural education needs breadth and depth: The role of second culture. In E. Silber (Ed.) Critical Issues in Foreign Language Instruction. New York: Garland.

このチャプターでは言語学習を通した「第二の文化」の習得の必要性について述べていました。言語学習を通して、言語能力だけでなく、違う世界観・考え方を学ぶということが必要だという意味のようです。

このチャプターでは巻末で「文化能力」のレべルについて、ACTFL(全米外国語教育協会)のOPI(oral proficiency interview)基準に合わせて、初級から上級まで記載していました。ちなみにOPIはインタビュー形式の口頭能力試験で、英語だけでなく様々な言語で行われています。一度、このOPIの日本語のインタビューアーになれるOPIテスター資格を取りたいなと思ったこともありましたが、資格取得に20万ぐらいかかったため諦めた記憶があります。

言語学習は「言語」だけではないというのは納得がいきますが、ただし「文化」を測定するとなると、何を学ぶべき文化とみなすのか(政治・ポップカルチャー・歴史等)、どこの文化を学ぶべき文化とするのか(国単位・地域単位等)、なかなか皆がある程度納得できるような定義は難しいのではないかと思いました。これは1991年に書かれたものなので、その頃はそこまで議論されていなかったのかもしれませんが、最近はこの前紹介したmetrolingualismでもあったように、ある言語=ある歴史・社会・国・民族と結びつかない場合も多いため、更に文化能力の定義となるとハードルが上がるのではないかなと思います。

だからこそ、今でも文化能力のレべルというのはオフィシャルな言語能力基準でははっきりと定義されないのかもしれません。