この前紹介したくろしお出版の「リテラシーズ」のシリーズの(詳しくはこちら)以下の本も読みました。
- 細川・西山(編)(2010)「複言語・複文化主義とは何か ―ヨーロッパの理念・状況から日本における受容・文脈化へ」くろしお出版
2001年に「ヨーロッパ言語共通参照枠」(Common European Framework of Reference for Languages)という言語教育に関する政策文書が発刊されましたが、それに掲げられている「複言語・複文化主義」について扱った本です。日本語で「参照枠」というと何のことか私には正直全くわからないですが、要するに「言語に関するヨーロッパ共通の枠組み・考え方」という意味だと私は理解しています。
この本でもところどころ触れられていましたが、複言語・複文化主義というのは個人の中での様々な言語が存在しているという「個人レベル」に注目しています。さらに、個人の中では言語が個別に存在するのではなくて、様々な言語が相互作用の下に共存しているといっています。(第2章(西山)p.28)
「○○語」のネイティブスピーカーになるために学習するのではなく、自分の中の「英語」や「フランス語」などの様々な言語・文化のリソースを使って生きていくというのが複言語・複文化主義の基にある考え方だと思います。
この本は3部構成で、第1部では複言語・複文化主義の理念のヨーロッパでの発展・課題等(第1章・執筆者:山本、第2章・執筆者:西山)や、ハンガリー(第3章・執筆者:福島)・ベルギー(第5章・執筆者:櫻井)などでの受容について説明し、第2部では、アジア・日本の文脈での受容というテーマで、個人、教室、政策レベルなどの異なる角度から複言語・複文化主義についてアプローチしていました。第3部は関連文献リストでこれは結構役に立ちそうです。
個人的に参考になった章もありましたが、長くなりそうなのでまた今度にします。