「Bitter Lake」というアダム・カーティスの政治ドキュメンタリーを見ました。
アダム・カーティス(Adam Curtis)は数々の賞を受賞している英国のドキュメンタリー監督です。オックスフォード大で博士までいったそうですが、途中でアカデミアに幻滅し、ドキュメンタリーの道に進んだそうです。
リンク:http://www.bbc.co.uk/iplayer/episode/p02gyz6b/adam-curtis-bitter-lake
このドキュメンタリーでは、エジプトのグレートビター湖(Bitter Lake)で1945年、ルーズベルト大統領とサウジのアブドゥルアズィーズ国王と会談を開いてからの世界で、アメリカ、イギリス、サウジ、ロシアといった大国の政治家がどう影響力を行使しようとし、それが当人が予想すらしなかった状況を生み出してきたか、またいかに現在の世界が(政治家がよく語るような)善悪という単純な構図では片づけられないかを、多様な視点を絡み合わせながら描いていました。
いくつもの視点が交錯していましたが、基本的にはアフガニスタンを中心に、アフガンの近代化、4月革命、ソ連侵攻、タリバーンの誕生、9.11、カルザイ政権の誕生、その後の混沌とイスラーム国の台頭までの世の中を描いています。
また、ただ事実を並べるだけでなくて、ところどころに人々の日常生活、コメディー番組、音楽などを織り交ぜ、感情的に訴えかけるような撮り方をしていています。こういった提示の仕方や全体的なストーリーの紡ぎ方(とその根拠)には今後、賛否両論が出てくるのかなとは思いますが、もはや誰も収拾できない混沌とした状況に圧倒される気持ちになる映画でした。
このドキュメンタリーは、BBCのオンデマンドサービスのiPlayerで2015年1月25日から10か月間、視聴できます。
彼の2004年のドキュメンタリー「The Power of Nightmares: The Rise of the Politics of Fear」は、日本でも「テロとの戦いの真相」と題してNHK BS2の『BS世界のドキュメンタリー』で放送されていたようです。他の作品はまだ見たことがないのですが、時間があればぜひ見てみたいと思います。