コーパスと翻訳研究についてのXiao and Yue (2009)を読みました。

下記の本の中のXiao and Yueのチャプターを読みました。トランスレーション・スタディーズにおけるコーパスの使用に関する論文でした。

  • Xiao, Richard and Yue, Ming (2009) Using corpora in Translation Studies: The state of the art. in Baker, Paul, ed. Contemporary Studies in Linguistics : Contemporary Corpus Linguistics. London: Continuum, 237-261.

Xiao and Yueはこの論文で、トランスレーション・スタディーズの議論は、「規範的」から「記述的」へ、「ミクロ的視点」から社会文化を含めた「マクロ的視点」に移行しているといっています。ある程度の規模のある実際のテキストの集合体であるコーパスは、この上記の2つの「記述的」視点、「マクロ的」視点のどちらにも有益だと言っています。

この論文では、翻訳研究でコーパスが使われる例を、最後には自分たちの研究のデータも出しながら、以下の3つに分けて挙げていました。

①応用トランスレーション・スタディーズ
翻訳作業、通訳・翻訳の教授法・トレーニング、そして翻訳ツール(Tradosなど)の開発に役に立つともいっています。

②記述的トランスレーション・スタディーズ
翻訳テキストによくみられる特徴や、翻訳者のストラテジーなどを実際のテキストの分析を通して調べる際にコーパスが使われるといっています。

③理論的トランスレーション・スタディーズ
翻訳の際の一般的理論を調べる分野だそうです。例えば、翻訳テキストだと、接続詞が多くなるなど原文よりも意味が明確化され(explication)、また複雑な語彙・文法が減り単純化される(simplification)ことが多いと言われているそうです。この仮説を調べるためにもコーパスは役に立つと言っていました。

コーパスを使いこなして、教育・研究で使えるようになりたいですね。