ドラマ「ロングバケーション」全話を1日で全部見ました。

また応用言語学とは関係ないですが、1996年の木村拓哉と山口智子の大人気ドラマ「ロングバケーション」を見ました。当時、話題になっていたのは知っていたのですが、見たのは今回が初めてです。1日1話ずつと思っていたのですが、結局1日ですべて見てしまいました。約20年後の今でも十分楽しめ、人気だったのも納得です。

  • ロングバケーション

ストーリーは省きますが、気になった点だけいくつかメモしておきます。

  • 携帯もパソコンも出てこない。携帯やパソコンがなく、自宅で電話を待ったり公衆電話から電話する様子が逆に新鮮で、この約20年間でいかに社会が変わったか(そして携帯やパソコンがいかに私達の在り方を変えたか)を実感しました。【追記:2016年01月15日の「ぬる様」のご指摘によると、葉山信二(竹野内豊)は携帯を使っていたようです】
  • 言葉遣いはドラマでよくある「~だわ」とか「~なの」のような女言葉はあまり出てきておらず、自然でカジュアルな若者言葉のように思えました。わざと主人公の南が「~しようぜ」と男言葉を使うシーンもありました。
  • 日本で育ち、生活をしている人にしかわからないような文化的レファレンスが非常に多いとも思いました。「山手線ゲーム」をしたり、(主人公の)南の名前を漫画「タッチ」の南ちゃんや三波春夫になぞらえたり、「ミス長良川くだり」だった主人公の南をからかったり、これはどうやって翻訳するのだろう・・と思う表現が山ほどありました。
  • 呼称もいろいろな呼称が出てきて、これは呼称が日本語ほど幅がない言語に翻訳は難しいのではと思いました。例えば木村拓哉演じる瀬名が主人公の南ことを「お姉さん」「あんた」「南」「南さん」と、場面に応じていろいろな呼び方をし、これで結構距離感が分かったりするのですが、この微妙なニュアンスを英語に訳せと言われると、お手上げ状態です。最後にも南が瀬名のことを敢えて「あなた」と呼ぶのですが、これもどうやって訳すのだろう・・と思いました。

前読んだ佐藤=ロスベアグ(編)(2011)の「トランスレーション・スタディーズ」(詳しくはこちら)の中の、日地谷=キルシュネライトの章で、村上春樹などは、ある程度海外の読者も執筆段階で視野に入れ、こういう文化的レファレンスを省いて小説を書く「プリ・トランスレーション」(前翻訳)作業をしていると書いていた記憶があります。

このドラマの場合は、基本的には海外の読者を視野に入れていないのかなと思いました。でも、調べてみると、結構海外でも人気があるみたいですね・・。ウェブで見ているとオフィシャルの字幕付きDVDの翻訳に文句をいっているファンもいました。

このドラマのファン・トランスレーションも見てみたいなと思ったのですが、ファントランスレーションそのものは研究の対象にはできないところも多いらしいので(詳しくはこちら)、残念です。

よく休んでリフレッシュできたので、明日からまた仕事しようと思います。