Scollon and Scollon (2003)を読了。実際に画像等を分析するときに役に立ちそうです。

映像や写真の分析をするときに役に立ちそうな以下の本を一通り読み終わりました。

  • Scollon, Ron, and Suzie Wong Scollon. Discourses in place: Language in the material world. Routledge, 2003.

前の記事でも書きましたが(詳しくはこちら)、この本では、Geosemiotics(地理記号論)というのを提唱していて、言語などの記号がどういう場所におかれていて、その場所でどのような意味を持つのかという、「ある場における社会的意味」に注目しているのが特徴です。

第2章からは分析するときの枠組みとして以下の3つを挙げていました。例えば1枚の場面(写真や画像、人の行動等)を分析する場合でも、以下のような視点からアプローチをすることができるといっています。大雑把ですが備忘録として以下記載しておきます。

①interaction order(相互作用の秩序)(Goffman)
interaction orderはこの前の記事でもちょっと触れましたが(詳しくはこちら)、ある人がどういう形態で他の人と関わりあっているのか(いないのか)という、人と人との関わり合いを主に分析するようです。これには以下のようなものがあるそうです。

  • 人と人との社会的・心理的位置づけを知るためのリソース(相手との距離や、時間感覚(急いでいるか等)、服装等)
  • 相互作用の状況(一人でいるのか、誰かといるのか、会議をしているのかなどの相互作用のカテゴリー。この前の記事のゴフマンの分類を挙げていました(詳しくはこちら))

②visual semiotics (視覚記号論)(Kress and van Leeuwen (1996)(視覚記号論)
また、Kress and van Leeuwenの提唱した視覚記号論も分析に役に立つといい、Kress and van Leeuwenを引用して以下の4つを挙げていました。

  • 描写される人の様子(represented participants)(描写されている人が髪を切ったりサッカーをしたり等、何かをする様子を表しているのか(narrative)、集合写真のように静的なものか(conceptual)など)
  • 描写の方法(modality)(描写の自然さ、真実性、正確さなど)
  • 構成(composition)(あるイメージが中心によっている描写されているか、左右に偏っているかなど)
  • 相互作用に関わる人(interactive participants)(あるイメージを作る人、見る人、イメージに描写される人はどういう人かなど)

③place semiotics (場所記号論)
これはScollon and Scollonのオリジナルのものですが、ある場所における記号の意味を知るために以下のような分析もできるといっています。

  • イメージ(写真)
  • どういう言語(code)が好まれているか(複数の言語が記載されている場合、その大きさや順番など)
  • inscription(記載方式)(フォントの種類や大きさ、材質など)
  • emplacement(定置)(適切な場所に置かれているか、そうでないかなど)
  • スペース(どういう場所なのか、公共の場か、私的な場かなど)
  • ディスコース(どういう種類の言葉なのか、交通標識などの規制言語、広告などの商業的言語なのか)

実際に分析するときには、細かい分類で迷うことはありそうですが、こういう基準を提示してくれていると、分析の足がかりになるのでありがたいなと思います。本自体も各章の最後に練習問題(?)のようなものまでついていて、読みやすかったです。

最後に地理記号論の3原則についても書いていましたが、疲れてきたのでまた今度にします。