この本の中に収録されているオクタビオ・パズ(Octavio Paz)の論文(エッセイ?)を読みました。オクタビオ・パズはメキシコの詩人・外交官で、私はまだ読んだことはないですが、かなり日本語にも訳されているようです。
彼は前回紹介したBassnett and Trivediの論文の中で引用され、印象に残っていました。
今回読んだのは以下の論文(原文はスペイン語、Irene Del Corralによる翻訳)です。
- Paz, Octavio. 1992. “Translation: Literature and Letters.” In Theories of Translation, eds. Ranier Schulte and John Biguenet. Chicago: Chicago University Press, 152–62.
Pazは、翻訳と創造、翻訳と原文が相互依存関係にあるといっています。
この論文でPazは原文と翻訳の境界線を曖昧にしていきます。Pazによると、どのテキストもユニークであると同時に、常に何かのテキストの翻訳でもあるといっています。つまり、テキストは、その前に存在する似た様なテキストに少し変化を加えたものであり、先立つテキストの翻訳なのだといっています。その先立つテキストも、その前に先立つテキストの翻訳で。。。と永遠にこれが繰り返され、完全に「オリジナル」なテキストというのは存在しないといっています。さらに、言語そのものも本質的には非言語の世界を「翻訳」しているのだから、言語そのものが翻訳なのだといっています。(p.154)Pazによると、読んだり批評したりすることも(言語内)翻訳であるといっています。 (p.159)
また翻訳と創造というのも区別がつかないことが多々あり、翻訳と創造は関係し合っているといっています。
確かに翻訳プロセスというのは創造力を働かせなければならないことが多々あるのでこれは理解できます。
Pazは人類学者ではありませんが、広い意味で翻訳を考えているという点で人類学者のHanksの前に紹介した論文と共通するところがあるのではないかなと思いました。