この記事では、共鳴音と阻害音の違いについて紹介します。
共鳴音と阻害音
共鳴音(sonorant)と阻害音(obstruent)の違いは以下のようになります。
阻害音:発音するときに、唇や舌などで呼気の流れが妨げられて出てくる音
共鳴音
阻害音
簡単にいうと、濁点をつけられる行の子音、濁音・半濁音の子音が阻害音です。
名前の阻害音・共鳴音
川原繁人(2022)によると、共鳴音は女性の名前に多く、阻害音は男性の名前に多く含まれるそうです。
明治安田生命が公開している日本人に人気の名前の分析すると、女性の名前に含まれる子音の67%が共鳴音でした。一方、男性の名前に含まれる子音は64%が阻害音でした。
なお、その理由として、音象徴という音が与えるイメージが関係していると考えられます。
共鳴音を含んだ名前は丸く、阻害音を含んだ名前は角ばったイメージがあると言われています(詳しくは「音象徴とは何か:タケテ/マルマ効果・ブーバ/キキ効果」もご覧ください)。
共鳴音は「丸さ」だけでなく「優しさ」と結び付けられることもあります。また、阻害音のうち、特に濁音は「強さ」「たくましさ」と結びつきやすいです。
ここらへんのイメージが、男の子・女の子の名前を考える際に影響を与えているのだと考えられます。
ちなみに、2022年の明治安田生命の名前の読み方ランキングのトップ10は以下の通りになっていました。
男の子 | 女の子 | |
1 | ハルト [haruto] | エマ[ema] |
2 | アオト[aoto] | メイ [mei] |
3 | リク[riku] | サナ [sana] |
4 | ミナト[minato] | ミオ [mio] |
5 | ハルキ[haruki] | イチカ [ichika] |
6 | ユイト[yuito] | ユイ[yui] |
7 | ハル[haru] | アオイ[aoi] |
8 | アオイ[aoi] | コハル[koharu] |
9 | ソウタ[sota] | ツムギ[tsumugi] |
10 | イツキ[itsuki] | ヒマリ[himari] |
子音のうち、共鳴音を緑、阻害音を赤で示しています。
男の子の名前のトップ10に出てくる子音20個のうち、阻害音は13つ、共鳴音は7つでした。
女の子の名前のトップ10に出てくる子音17個のうち、阻害音は7つ、共鳴音は10つでした。
男の子の名前のほうが阻害音は好まれ、女の子の名前のほうが共鳴音が好まれるという傾向はありました。(とはいえ、10個ずつだけなのでなんともいえませんが)
また、女の子の人気の名前の子音に[m]の音がとても多いですね。
男の子は「ミナト」のみでしたが、女の子は「エマ」「メイ」「ミオ」「ツムギ」「ヒマリ」と10個中5つに[m]の音が入っていました。
まとめ&ご興味のある方は
ご興味のある方は以下の記事もご覧ください。
- 音象徴とは何か:タケテ/マルマ効果・ブーバ/キキ効果
- 【日本語の連濁】ライマンの法則とは何か?その例外とは
- 有声性・調音点・調音法について(日英表記・国際音声記号の表付き)
- 日本語の母音融合とその例、母音融合が起こる理由について
参考文献
自分の娘(特に次女)の言語発達の観察を通して、音声学の楽しさを伝えてくれる本です。一般向けの本になっているので、音声学の知識がなくても楽しめます。
上記以外でも、川原の『フリースタイル言語学』や『音とことばのふしぎな世界-メイド声から英語の達人まで 』でも、メイドの名前の分析の中などで、共鳴音と阻害音について触れられています。