共鳴音と阻害音の違いについて

この記事では、共鳴音と阻害音の違いについて紹介します。

共鳴音と阻害音

共鳴音(sonorant)と阻害音(obstruent)の違いは以下のようになります。

共鳴音:発音するときに、唇や舌などで呼気の流れがあまり妨げられずに出てくる音
阻害音:発音するときに、唇や舌などで呼気の流れが妨げられて出てくる音

共鳴音

「共鳴音」というのは、あまり呼気の流れが妨げられない音です。
母音は共鳴音になります。「あ」や「い」など母音を発音するとき、特に何か妨げられている感じはしないと思います。
子音だと、鼻音([m][n]など)、はじき音([ɾ]など)、接近音([j][ɰ][β]など)が入ります。
例えば、[m]の鼻音を発音するとき、空気が鼻から抜けるような感じがすると思います。
日本語だと、ア行(母音)と、ナ行、マ行、ヤ行、ラ行、ワ行の子音が共鳴音です。
これらの行は、濁点をつけられられないのが特徴です(つまり、ナ行、マ行、ヤ行に対応する濁音の行はありません)。

阻害音

「阻害音」というのは「阻害」という言葉にもあるとおり、呼気の流れが妨げられる音になります。
子音の破裂音( [p][b][t][d][k][g]など)、摩擦音([s][ʃ][z][ʒ]など)、破擦音([ tʃ ][ts ][dʒ][dz]など)が入ります。
例えば、[p]の音を発音するときは、一度両唇を閉めてから開いて発音するので、空気が妨げられます。
[k]の音を発音するときも、舌の奥を口内上部の軟口蓋に寄せ、空気の流れを一度止めたあとに、空気を開放させて音を出しています。
日本語だと、カ行・ガ行・サ行・ザ行・タ行・ダ行・ハ行・パ行・バ行の子音が阻害音になります。

簡単にいうと、濁点をつけられる行の子音、濁音・半濁音の子音が阻害音です。

 

名前の阻害音・共鳴音

川原繁人(2022)によると、共鳴音は女性の名前に多く、阻害音は男性の名前に多く含まれるそうです。

明治安田生命が公開している日本人に人気の名前の分析すると、女性の名前に含まれる子音の67%が共鳴音でした。一方、男性の名前に含まれる子音は64%が阻害音でした。

なお、その理由として、音象徴という音が与えるイメージが関係していると考えられます。

共鳴音を含んだ名前は丸く、阻害音を含んだ名前は角ばったイメージがあると言われています(詳しくは「音象徴とは何か:タケテ/マルマ効果・ブーバ/キキ効果」もご覧ください)。

共鳴音は「丸さ」だけでなく「優しさ」と結び付けられることもあります。また、阻害音のうち、特に濁音は「強さ」「たくましさ」と結びつきやすいです。

ここらへんのイメージが、男の子・女の子の名前を考える際に影響を与えているのだと考えられます。

 

ちなみに、2022年の明治安田生命の名前の読み方ランキングのトップ10は以下の通りになっていました。

男の子女の子
1ハルト [haruto]エマ[ema]
2アオト[aoto]メイ [mei]
3リク[riku]サナ [sana]
4ミナト[minato]ミオ [mio]
5ハルキ[haruki]イチカ [ichika]
6ユイト[yuito]ユイ[yui]
7ハル[haru]アオイ[aoi]
8アオイ[aoi]コハル[koharu]
9ソウタ[sota]ツムギ[tsumugi]
10イツキ[itsuki]ヒマリ[himari]

子音のうち、共鳴音を緑、阻害音を赤で示しています。

男の子の名前のトップ10に出てくる子音20個のうち、阻害音は13つ、共鳴音は7つでした。

女の子の名前のトップ10に出てくる子音17個のうち、阻害音は7つ、共鳴音は10つでした。

男の子の名前のほうが阻害音は好まれ、女の子の名前のほうが共鳴音が好まれるという傾向はありました。(とはいえ、10個ずつだけなのでなんともいえませんが)

また、女の子の人気の名前の子音に[m]の音がとても多いですね。

男の子は「ミナト」のみでしたが、女の子は「エマ」「メイ」「ミオ」「ツムギ」「ヒマリ」と10個中5つに[m]の音が入っていました。

まとめ&ご興味のある方は

ご興味のある方は以下の記事もご覧ください。

参考文献

自分の娘(特に次女)の言語発達の観察を通して、音声学の楽しさを伝えてくれる本です。一般向けの本になっているので、音声学の知識がなくても楽しめます。

上記以外でも、川原の『フリースタイル言語学』や『音とことばのふしぎな世界-メイド声から英語の達人まで 』でも、メイドの名前の分析の中などで、共鳴音と阻害音について触れられています。