言語学の内容語(content word)・機能語(function word)とその特徴について

この記事では内容語と機能語の違いについて説明します。

内容語と機能語

内容語と機能語は、語の種類の説明で頻出する用語です。

以下のように分けられます。

  • 内容語とは、名詞・動詞・形容詞・副詞に代表されるような実質的な意味を持つ語のこと
  • 機能語とは、接続詞・冠詞・助動詞・前置詞・代名詞など主に文法機能を担う語のこと

英語だと、内容語は「content word」、機能語は「function word」と言います。

この2つについて、日英の例を挙げた後に、その特徴について説明します。

日英の例

内容語

内容語は、名詞・動詞・形容詞・副詞に代表されるような実質的な意味をもつ語のことです。

日本語の場合だと以下のような例があります。

  • 犬、猫、空、日本語、コンピューター(名詞)
  • 走る、寝る、食べる(動詞)
  • かわいい、楽しい、うれしい(形容詞)
  • ゆっくり、だんだん、のろのろ(副詞)

 

英語だと以下のような例があります。

  • dog, computer, chair, desk(名詞)
  • run, sleep, eat, enjoy (動詞)
  • nice, happy, sleepy(形容詞)
  • gradually, always, maybe(副詞)

機能語

機能語は、接続詞・冠詞・助動詞・前置詞・代名詞など主に文法機能を担う語のことを指します。

日本語の場合だと以下のような例があります。

  • の、が、を、に(助詞)
  • それ、あれ、これ(代名詞)
  • そして、それから、それで(接続詞)
  • らしい、ようだ(助動詞)

 

英語だと以下のような例があります。

  • the, an(冠詞)
  • she, he, it, they(代名詞)
  • at, in, into, by(前置詞)
  • and, but, so, therefore(接続詞)
  • will, might, may, should, shall(助動詞)

文法書に出てくるような語が多いですね。各言語の文法書は、基本はその言語の機能語を扱っていると言えます。

内容語・機能語の特徴

特徴①:属する語の数

まず、内容語・機能語の違いとして、属する語の数の違いが挙げられます。

内容語は、属する語の数が非常に多いです。

日本語も英語も、名詞・動詞・形容詞・副詞で、語彙の大部分が形成されています。

先ほど、日英の内容語の例をあげましたが、量が多すぎて、どの語を書けばいいのか少し迷いました(結果、適当に思いついたものを挙げただけになってしまいましたが)。

 

一方、機能語は、属する語の数が少ないです。

英語の前置詞や、日本語の助詞の数は限られていて、例を挙げようと思えば、すべて挙げることができます。

特徴②:新しい語を簡単に作れるか

次に、新しい語を簡単に作れるかという点でも、内容語・機能語は異なっています。

内容語は、開いた類(open class)といって、新しい語をどんどん加えることができます

例えば、「今年の新語」に過去数年選ばれた語を見てみると、名詞や動詞、形容詞が多いです。

  • (名詞)●●ガチャ、投げ銭、おうち●●、ウェビナー、メタバース、密、リモート
  • (動詞)闇落ち
  • (形容詞)チルい
  • (副詞)ごりごり

(三省堂辞書を編む人が偉ぶ「今年の新語」のサイトより抜粋して引用)

内容語は、新しい語をどんどん作ることができるんですね。

例えば、●●ガチャ、おうち●●、●●構文のように、接頭辞・接尾辞のような用法で、語を使っていくこともできます。

また、「投げる+銭」を合わせて「投げ銭」、「闇+落ちる」で「闇落ち」のような複合語を作ることもできます。

「チルい」、「メタバース」、「ウェビナー」、「リモート」のように、英語などの他の語からの借用も簡単にできます。

 

一方、機能語は、閉じた類(closed class)といって、新しい語を作りにくいです

勿論、文法化によって、内容語が機能語に移行することで、機能語が増えることはあります。

(文法化については「文法化とは何か」をご覧ください。)

ただ、内容語が簡単に新しい語を作れるのに対し、機能語の場合は新たな語を作るのはなかなか難しいです。

英語圏だと、ジェンダーのhe/sheの区別が議論になっているので、ジェンダー差のない新たな中性単数代名詞の提案も過去にされたことがあるようですが、定着には至っていません。

最近は、複数形のtheyを単数代名詞に使ったりもしていますね。

 

特徴③:音節の数

3つ目に、内容語・機能語は音節の数でも違いがあります。

 

内容語は、機能語に比べて、音節数の数が多い傾向があります。

勿論、「火」や「目」のように短いものもありますが、「チョコレート」や「教育委員会」など長いものは長いです。

 

一方、機能語は、内容語に比べて、音節数の数が少ない傾向があります。

「の」「が」などの助詞は、音節数が少ないですね。

接続詞は「したがって」などの長いものもありますが、全体的な傾向としては少ないと言えるでしょう。

特徴④:各語の使用頻度

4つ目に、各語の使用頻度も違います。

内容語は、機能語に比べると各語の使用頻度は、低い傾向にあります。

文法的機能を持つ機能語は、発話・文・内容にかかわらず、繰り返し使われます。なので、使用頻度は全体的に高くなります。助詞や前置詞、代名詞などは多用されますね。

一方、内容語の使用は、話す・書くトピックによっても大きく左右されますし、全体として使用頻度は低くなります。

まとめ

この記事では内容語と機能語について簡単に紹介しました。

まとめると以下のようになります。

  • 内容語とは、名詞・動詞・形容詞・副詞に代表されるような実質的な意味を持つ語のこと
  • 機能語とは、接続詞・冠詞・助動詞・前置詞・代名詞など主に文法機能を担う語のこと
  • 内容語・機能語の特徴の違いとして以下がある
    • 特徴①:属する語の数は、内容語は多く、機能語が少ない
    • 特徴②:新しい語については、内容語は作りやすいが、機能語は作りにくい
    • 特徴③:音節数は、内容語が多く、機能語が少ない傾向
    • 特徴④:各語の使用頻度は、内容語が低く、機能語が高い傾向

 

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参考文献

有名な言語学の入門書です。言語学全般について丁寧に説明してあります。