文字の分類
世界の文字は、大きく分けて以下の3つに分けられます。
- 表音文字:言語の音を表す文字
- 表語文字:言語の音と意味を表す文字
- 表意文字:言語の意味を表す文字
この記事では、この3つについて説明します。
なお、表語文字と表意文字の区別は、結構あいまいです。
書籍によっては、「表意文字(表語文字)」というように、表意文字を広く定義し、表意文字の中に表語文字を含めているケースもあります。
表音文字(phonogram)
表音文字とは
表音文字は音を表す文字です。
英語ではphonogramで、phono(声・音)とgram(書かれたもの)を合わせたものです。
表音文字の例
表音文字の例は、ひらがなやかたかなです。
ひらがなやかたかなは、「か」をみると[ka]と発音する、「サ」をみると[sa]と発音するというように、音を教えてくれる文字です。
「か」や「サ」という文字自体には、何か意味があるわけではありません。
ラテン文字も表音文字です。
これらの文字も、「A」や「B」で何かを意味するわけでなく、音を教えてくれるものです。
表音文字の細分
表音文字は、どの単位の音を表しているかによって、音節文字と音素文字などに細分されます。
ひらがなやカタカナは、一文字で一音節(母音または母音・子音の組み合わせ)を表すので、音節文字になります。
(とはいえ、「ん」や小さい「っ」など、音節を表していないものもあります。)
ローマ字、ラテン文字やアラビア文字などは、一文字で一つの音素(音の最小単位)を表しているので、音素文字に含められます。
表音文字のメリット・デメリット
表音文字のメリットは、文字の数が比較的少ないことです。
また、文字を見たら、音がわかるので(英語やフランス語のように、綴りによって同じ文字でも複数の読み方が出てくる言語もありますが)、比較的楽に学ぶことができます。
デメリットとしては、発音をつづらなければいけないので、文字数が多くなりやすいです。
「表音」という語も、漢字だと「表音」と2文字で書けますが、表音文字であるひらがな・カタカナで書くと「ひょうおん」「ヒョウオン」と5文字になり、文字数が多くなってしまいます。
表語文字(logogram)
表語文字とは
表語文字は、音と意味の両方を表す文字です。
英語はlogogramで、logos(言葉・論理)とgram(書かれたもの)を組み合わせたものです。
一つの文字が一つの単語・形態素(=意味を持つ最小の単位)を表します。
表語文字の例
漢字は、表語文字の代表例です。
「月」という文字をみると、「つき」や「ゲツ」という読み方のみならず、お月様という意味(概念)も示されています。
なお、漢字の場合、日本語の音読み・訓読みなど、読み方が複数あることはあります。ただ、「月」を「そら」と読むことはなく、読み方は定まっていると言えます。
楔形文字やヒエログリフの一部も表語文字の例として、よくあげられます。
表語文字のメリット・デメリット
表語文字のメリットは、文字自体が意味も表しているため、文字の読み方がわからなくても、内容が理解できることです。
日本語話者なら、中国語を学んだことがなくても、ある程度、文字を手がかりに中国語で書かれた内容を理解できることが多いです。
デメリットとしては、数が多いので、覚えるのが大変という点があげられます。
表意文字(ideogram)
表意文字とは
表意文字は、一つの文字が一つの意味(概念)を表す文字です。
英語ではideogramで、idea(観念、概念)とgram(書かれたもの)が組み合わされたものです。
表意文字の例
表意文字の例はアラビア数字です。
「1」は数という意味(概念)を表していますが、読み方は定まっていません。
単独で「1」と書くと、読み方は「いち」です。
でも、「10」と書くと同じ「1」の文字が含まれていますが、「じゅう」と読みます。
「100」と書くと「ひゃく」、「1010」だと「せんじゅう」です。このように読み方は定まっていないです。
また、日本語では「いち」ですが、英語では「one」、フランス語では「un」などと呼び、言語によっても読み方が違います。
絵文字や顔文字も、読み方は人によって違いますが(そもそも読み方がないものも多いと思います)、それぞれが意味を表していますので、表意文字に含められることが多いです。
まとめ
この記事では、表音文字・表語文字・表意文字について紹介しました。
改めてまとめると以下のようになります。
- 表音文字:言語の音を表す文字
- 表語文字:言語の音と意味を表す文字
- 表意文字:言語の意味を表す文字
ただ、文字内でも単純に定義にあてはまらない文字もあって、細かく考えるとなかなか複雑です。
例えば、漢字は表語文字の代表例として挙げられますが、アメリカを「亜米利加」と音を当て字で書くこともあり、表音文字のような使われ方をされることもあります。
また、ヒエログリフは表語文字の例としてよくあげられますが、ヒエログリフの多くは表音文字で、表語文字は一部のようです。
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