この記事では「閉じる」と「閉める」の違いを説明します。
どちらも他動詞ですし、意味的にも「ドアを閉じる」「ドアを閉める」とどちらも使える表現も多いので、ややこしいですね。
どう使い分けされているのか、調べてみました。
「閉じる」と「閉める」の違い
「閉じる」または「閉める」が使われやすい表現
まず、つくばウェブコーパスの2語検索で「閉じる」と「閉める」の使用に差が出たものを紹介します(頻度10以上)。
「閉じる」のほうが使われやすい表現には以下のようなものがあります。
- 目/瞼/瞳/片目/足を閉じる
- ブラウザー/タブ/ウィンドーを閉じる
- 本/傘を閉じる
- 心を閉じる
- 幕/会議/生涯を閉じる
一方、「閉める」のほうが使われやすい表現には以下のようなものがあります。
- 雨戸/障子/網戸/ふすまを閉める
- 引き出しを閉める
- カーテン/ブラインドを閉める
- 玄関/車庫を閉める
- 元栓/蛇口/栓/バルブを閉める
- 鍵を閉める
使い分けの傾向
この2つを比べると、以下のような傾向があると考えられそうです。
- 「~を閉じる」
- (立体的に)広がっていたものを元の状態に戻すとき
- 続いていたものが終わるとき
- 「~を閉める」
- (横にずらすなど平面的に)開いていたものを元に戻すとき
- 物などを使って、固定して動かないようにしたり、通っていたものを通らない状態にするとき
この点についてもう少し詳しく説明していきます。
「閉じる」が使われやすいもの
①(立体的に)広がっていたものを元の状態に戻すとき
「閉じる」は「本を閉じる」「傘を閉じる」のように、立体的に広がっていたものが元の状態に戻るというときに使われやすいです。
ウェブサイトのブラウザーやアプリ、タブ、ウィンドーなども「閉じる」を使うことが多いですね。
それ以外に、「絵を閉じる」「足を閉じる」など体のに関係する語の場合も「閉じる」が使われやすいです。
「心を閉じる」とも言いますね。
②続いていたものが終わるとき
「閉じる」は続いていたものが終わるときにも使われやすいです。
「会議を閉じる」「幕を閉じる」「生涯を閉じる」などがそれにあたります。
「閉める」が使われやすいもの
①(横にずらすなど平面的に)開いていたものを元に戻すとき
「閉める」は横にずらすなどして平面的に開いていたものが元に戻るときに使われやすいです。
例は、「ふすまを閉める」「網戸を閉める」「障子を閉める」などですね。
いずれも横方向にスライドさせるイメージだと思います。
「カーテンを閉める」や「ブラインドを閉める」「引き出しを閉める」も似たようなイメージで、横または縦方向にずらす形になります。
また、ドアの場合も、スライド式のドアだったら「閉める」のほうが使いやすいかもしれません。
② 物などを使って、固定して動かないようにしたり、通っていたものを通らない状態にするとき
「閉まる」は物などを使って、固定して動かないようにしたり、通っていたものを通らない状態にするときも使いやすいようです。
「元栓を閉める」「蛇口を閉める」「栓を閉める」などがその例ですね。
物をひねったりして、通っていたものを通らない状態にする場合などは、「閉める」が使いやすそうです。
「鍵を閉める」の場合も、(最近はオートロックなどもありますが)鍵を回すことで、ドアを開かない状態にしています。
まとめ
コーパスの例をもとに、「閉じる」と「閉める」の違いについて考えてみました。
説明しきれないものも多いのですが、何かのお役に立てれば幸いです。
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