混成語(blend words)とは何か?複合語との違いは?

この記事では混成語(blend word)とその特徴、複合語との違いについて説明します。

混成語とは?

混成(blending)というのは、異なる単語のはじめと終わりを結合して新しい語を作る方法です。

混成語(blend word)は、この方法で作られた語のことを言います。

 

日本語の混成語の例としてよくあげられるのが「ゴジラ」です。

リラ + クジラ → ジラ

 

ゴリラという語の前半部分である「ゴ」と、クジラの後半部分である「ジラ」を組み合わせて作られているのがわかりますね。

 

他にも日本語の混成語は以下のようなものがあります。

  • ピアノ + ハモニカ → ピアニカ
  • バイバイ + さよなら → バイなら
  • ずたずた + ボロボロ → ずたぼろ
  • ター + ファックス → レタックス
  • ネスレ + エスプレッソ → ネスプレッソ
  • ダスト + ぞうきん → ダスキン

日本語の混成語は、メディアの新語や商品名でよく使われます。一時的にはやる語も多いです。

 

英語でも混成語は多数見られます。英語の例としては以下のようなものがあります。

  • breakfast + lunch → brunch
  • Bretain + exit → Brexit 
  • motor + hotel → motel
  • emotion + icon → emoticon
  • Oxford + Cambridge → Oxbridge
  • work + alcoholic → workaholic

 

なお、混成語は、かばん語(portmanteau)とも呼ばれます。

これは、ルイス・キャロルが、「鏡の国のアリス」の中のJabberwockyの詩の中で、混成語が「portmanteau」という両開きの旅行カバンのようだと表現したことに由来します。

どうして両開きのカバンなのかというと、二つの意味を一つのことばに詰め込んでいるからという理由だそうです。

 

混成語の特徴

混成語の特徴として、以下のようなものがあります(窪薗 2008)。

  1. 意味のよく似た2語が混成する。
  2. 1語の前半ともう一つの語の後半が結合する。
  3. 前半を残す語からnモーラ採る場合には、もう一つの語のn+1モーラ目と転移する。

 (窪薗 2008より引用)

必ずしも上記の特徴が当てはまるというわけではないのですが、傾向としてとらえられると思います。

似た意味の2語が混成する

まず、同義語や類義語を組み合わせることが多いです。

  • バイバイ + さよなら → バイなら
  • ずたずた + ボロボロ → ずたぼろ

この例のように、似ている語が合わさることが多いです。

ただ、「ダスキン(ダスト+ぞうきん)」など、日本語の商品名で使われる混成語では、このルールが当てはまらないことも多いようですね。

 

1語の前半ともう一つの語の後半が結合する

次に、混成語は一つ目の語の前半と2つ目の語の後半を結合することが多いです。

  • リラ + クジラ → ジラ

ゴジラの場合でわかるように、「ゴリラ」の前半部分の「ゴ」と、「クジラ」の後半部分の「ジラ」を組み合わされています。

 

前半を残す語からnモーラ採る場合には、もう一つの語のn+1モーラ目と転移

最後に、元の語の1語目で使われる部分と、2つ目の語の脱落する部分は基本同じ長さになります。

なお、この特徴は、日本語の混成語の特徴になります。

これだけだとわかりづらいので、例で考えてみます。

  • リラ + クジラ → ジラ

「ゴジラ」の場合、1語目の「ゴリラ」の前半の「ゴ」を取っています。

「ゴ」の長さは1モーラになります(「モーラ(拍)」というのは、日本語の音の長さの単位です。)。

そして、2語目の後半部分は、「ゴ」の長さに当たる1モーラ分を脱落させて(つまり「ク」を脱落させて)、「ジラ」をつけています。

 

  • ダスト + ぞうきん → ダスキン

「ダスキン」の場合は、一語目の「ダスト」の「ダス」と二つ文字を採っています。つまり、2モーラ分とっていることになります。

なので、2語目の「ぞうきん」の後半部分は、2モーラ分(「ぞう」)を脱落させて、3モーラ目以降(「きん」)をとるということになります。

 

複合語・複合語の短縮形との違い

混成語でややこしいのが、複合語との違いです。

複合語との違い

複合語との違いは、基本は分解できるかできないかで区別できます。

複合語は2つの語を組み合わせて作られた語です。例としては、「緑茶」、「手足」、「カレーライス」などがあります。

(詳しくは「単純語と合成語(複合語・畳語・派生語)について」をご覧ください。)

複合語は、その構成要素の元の単語に分解できます。

例えば、「緑」と「茶」、「手」と「足」、「カレー」と「ライス」に分解でき、そのそれぞれが意味を持っています。

 

一方、混成語の場合は、その語を構成する元の単語が完全には含まれていないので、基本は分解できません。

「ゴジラ」を「ゴ」と「ジラ」に、「ピアニカ」を「ピア」と「ニカ」に分解しても、意味をなしません。

 

ただ、以下に述べる複合語の短縮形の場合などは、このルールは当てはまらないので注意が必要です。

 

複合語の短縮形との違い

混成語と複合語の短縮形と混乱することもあります。

複合語の短縮形としては、「ゲーセン」、「ポケモン」、「セクハラ」、「パソコン」などがあります。

先ほどの複合語との見分け方のルールにのっとると、「ゲーセン」を「ゲー」と「セン」に分解しても意味をなさないので、混成語のようにも見えます。

 

複合語の短縮形と混成語は、元となる2つの語を組み合わせた語が存在するかどうかで区別できます。

「ゲーセン」の場合、元の語は「ゲーム」と「センター」で、この2つを組み合わせた「ゲームセンター」という複合語は存在しています。

「ポケモン」の場合も、元の語の「ポケット」と「モンスター」を組み合わせた「ポケットモンスター」という語が存在しています。

「セクハラ」や「パソコン」についても、それぞれ「セクシャルハラスメント」、「パーソナルコンピューター」という元となる複合語が存在します。

 

一方、混成語の「ゴジラ」の場合、元の語は「ゴリラ」と「クジラ」です。この2つを連続させて「ゴジラクジラ」といっても意味をなしません。

同じく混成語の「ピアニカ」も、元の語「ピアノ」と「ハモニカ」を組み合わせた「ピアノハモニカ」という複合語は存在しません。

 

複合語の短縮形というのは、あくまで元の複合語が存在していて、それが短縮されています

混成語は、別々の語が存在していて、その2つの語を連続させても、意味をなしません

 

まとめ

今回は混成語について説明しました。まとめると以下のようになります。

  • 混成語は、異なる単語のはじめと終わりを結合して作られた語のこと。かばん語ともいう。
  • 混成語の特徴として以下のようなものがある。
    • 意味の似た語が合わさる。
    • 1語の前半部分と、もう1語の後半部分が組み合わされる。
    • 元の語の1語目で使われる部分と、2つ目の語の脱落する部分は基本同じ長さになる。
  • 複合語とは、2つの語に分解できるかどうかで基本区別できることが多い。

 

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ハリー・ポッターやドラゴンボール、商品名、会社名などの名前、言い間違いなどをもとに、日本語・英語のリズムや音節構造を説明している本です。

今回取り上げた混成語については、言い間違いや商品名をもとに、その特徴を説明しています。

言い間違いの一種に、混成エラーという似た語を混ぜてしまうものがあるのですが、その間違い方も、混成語の特徴にのっとったもののことが多いそうです。