この前紹介したラーニング・ジャーナルですが、これは結構、クラスの活動としてだけでなく、研究のデータとしても使われることがあります。こういうジャーナルやダイアリーを使った研究はよく見かけます。最近読んだのでは以下のようなものがあります。
- Pearson-Evans, Aileen. “Recording the journey: Diaries of Irish students in Japan.” In: Byram, M. & Feng, A
. (eds.). Living and studying abroad. (2006) Clevedon: Multilingual Matters.
この論文では、日本に留学したアイルランドの学生のダイアリーを分析していました。
でも、研究で使う前に把握しておきたいのがその良し悪しですね・・・。ということで、今日は以下の短い論文を読みました。第二言語学習におけるダイアリー(日記)研究の問題と展望について書いています。
- Fry, John. “Diary studies in classroom SLA research: Problems and prospects.” JALT Journal 9.2 (1988): 158-167.
JALT(全国語学教育学会)のJALTジャーナルに掲載された論文です。
Fryによると、ダイアリー研究については以下の3つがよく言われるそうです(p.158)。
- クラスでの第二言語習得の仮説を立てるのに役立つ
- 学習者の変数(違い)について知ることができる
- 第二言語習得のプロセスそのものについての示唆がある
ただ、この論文で挙げられていたダイアリー研究の問題としては以下のようなものがありました。
①データ収集についての問題
- 時期・それからダイアリーの量や内容に一貫性がない。(日記を書くのは時間もかかるので、初めはやる気でも途中で疲れてくる)
- 書き手が、研究者の望む内容を書こうとする。
- 日記を書くうちに、考えが変わることがある。
②データ解釈についての問題
- ダイアリーの内容を既存の分析カテゴリーに分けていくのか、それとも帰納的にデータを基に分析カテゴリーを決めていくのか、いくつぐらいの分析カテゴリーを設けるのか、分析カテゴリー内でのデータが一貫しているのか、など様々な事を考えなければならない。
③ダイアリー研究の成果
- ダイアリー研究は、多数の問題を浮き彫りにするため、第二言語習得の仮説を立てるのには役立つのではないか。また多様な学習者像を描くのにも役に立つのではないか。ただし、どちらも結果が一般化でき、将来の研究につながるような形で提示されていることが条件。研究の初期段階で使うのは有用かもしれない。
- ただし、アクション・リサーチの場合は別。、アクション・リサーチの場合は学習の「一般的真実」を求めるものではないため、ダイアリーはそのものとして有用なのではないか。
アクションリサーチは、現場の教師が自分の身近な課題に対して行う調査研究ですが、これについてはまた今度時間があれば書こうと思います。