外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)
外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント(DLA)について紹介したいと思います。
日本語指導が必要な外国人児童生徒の増加に伴い、これらの生徒の日本語能力をどう測定するかが課題になっています。
このアセスメントは、2010年から2012年度に行われた「外国人児童生徒の総合的な学習支援事業」の一環として開発されたものです。
なお、文部科学省の「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメントDLA」のページから資料一式をダウンロードできます(アクセス日:2020年7月21日)。この記事も、この資料に基づいて記載しています。
また、東京外国語大学の多言語多文化共生センターのページ(アクセス日:2020年7月21日)から、使い方マニュアルなども動画で見られます。
「DLA」とは、「対話型アセスメント(Dialogic Language Assessment)」の略です。
JSLは「第二言語として学ぶ日本語(Japanese as a second language)」のことです(JSLについては「第二言語教育と外国語教育:ESL&EFL/JSL&JFLの違いについて」もご覧ください)。
対話型アセスメント(DLA)の構成
対話型アセスメントは、以下の構成になっています。所要時間は目安です。
- 「導入会話」(5分程度)
- 「語彙力チェック」(10~15分程度)
- <話す>(20~30分程度)
- <読む>(20~30分程度)
- <書く>(20~40分程度)
- <聴く>(15~20分程度)
まず①「導入会話」と②「語彙力チェック」で子どものレベルをチェックします。
そのうえで、③~⑥に進むかを判断します。③<話す>は問題ないと感じられる場合は省略可のようです。
また、④~⑥の実施順序も柔軟に行っていいようです。
さらに、1回ですべて行うのは望ましくないとされており、1回の所要時間は45~50分以内となっています。数日にわけて実施することが推奨されています。
テスト結果を、評価参照枠(全体・技能別)と照らし合わせながら、支援内容を考えていくという流れになっています。
対話型アセスメント(DLA)の特徴
対象者
この対話型アセスメントの特徴は、まず、外国人児童生徒のうち、日常生活はできるが、教科学習に困難を感じている生徒を対象にしていることです。
日本で生活して数年たつと、日常会話は流暢になることが多いですが、教科学習というのは、抽象度の高い語彙力や認知力が求められ、日常会話とは違う能力が求められます(ただし、こういった能力を測るテストはあまりありません)
対話型アセスメントは、教科学習言語能力を測り、それに基づき支援・指導計画の立案に役立てることとを主な目的にしています。
(興味のある方は、「Cumminsの提唱したCF(会話の流暢度)、DLS(弁別的言語能力)、ALP(教科学習言語能力)」もご覧ください)
対話を通して評価
「評価」というと、紙と鉛筆で問題を解くようなテストや、集団でやる一斉テストのようにやるものを思い浮かべるかもしれません。
この対話型アセスメントは「対話型」ということばにもあるとおり、子どもが一人ずつ、マンツーマン形式で評価を受けます。
例えば「読む」というテストでは、読む前に「これから本を一緒に読みましょう」と言って、テキストのレベルを生徒児童と一緒に選ぶところからはじまります。
その後、一緒に読み、内容について話し合い、読んだ後でも振り返りなどをします。
対話を通して子どもの力を引き出しながら、測ることが特徴です。
このテストを通して、指導者が子どもたちに向き合う機会を作り、支援活動で必要となる学習内容・領域を考えていくこと(p. 6)が特徴になっているようです。
情意面にも配慮
また、児童生徒のやる気を引き出したり、必要な場合は児童生徒が話したり書いたりするのを忍耐強くまったりと、児童生徒の情緒面に配慮しているのも特徴だと思います。
例えば、実践ガイドの手順をみていると、以下のような記述もあります。
- これからすることを子ども(児童)のやる気が増すように楽しく説明する(<読む>p. 45、<聴く>p. 113など)
- 全体をふり返り、良いところを見つけてしっかりほめる(<話す>p. 44、<読む>p. 47など)
- 書く様子を見守り、助けを求められたときにはこたえる(<書く>p. 80など)
上記のポイントとも似ていますが、このテスト(対話)を通して、指導者が児童生徒と信頼関係を築き、子どもの力を認めながら、その力を伸ばすという姿勢もあります。
まとめ
対話型アセスメントは児童一人一人に対話を通して評価し、必要な支援を考えるという点で非常に有意義な測定方法だと思います。
ただ、外国人児童が少ない地域ではこういうアセスメントも比較的やりやすいと思うのですが、外国人児童が多い地域では、このアセスメント方法は教師側の負担が重い気もしてしまいます。
2017年の記事ではありますが、実際にこういった評価方法を使っている学校は4分の1ほどにとどまるという記事もありました「田中宝紀「どの子に「日本語指導が必要」なのか、客観的測定採用校4分の1―曖昧な判断実態明らかに」2017年6月29日)。
また、この対話型アセスメントを学級担任がやるのか、外国人指導担当教員や支援員がやるのかなども問題になってくるような気がします。
さらに、対話型アセスメントの資料にも書いてありましたが(p. 12)、テストは誰がやるか、いつやるかによって結果がだいぶ変わってくると考えられるため、信頼性の問題はあるかと思います。