バイリンガリズムの概念
二言語が話せる人のことを「バイリンガル」と呼ぶことがありますが、一言にバイリンガルといっても、習得時期や習得の程度によって様々な概念が提唱されています。今回は以下の4つについて説明します。
- 同時性バイリンガリズム(simultaneous bilingualism)
- 後続性バイリンガリズム(consecutive bilingualism/sequential bilingualism)
- 加算的バイリンガリズム(additive bilingualism)
- 減算的バイリンガリズム(subtractive bilingualism)
同時性バイリンガリズム/後続性バイリンガリズム
同時性バイリンガリズム/後続性バイリンガリズムは、習得時期によるものです。
同時性バイリンガリズムとは、「同時」という言葉にある通り、幼児期から、2つの言語に同時に触れて育ち、2言語を習得したということです。
家庭で2言語使用して育った場合などがそのケースに当たります。
後続性バイリンガリズムとは、母語が確立した後に、次の言語を学ぶケースです。
第二外国語などとして言語を始めて学ぶ場合などは後続性バイリンガリズムになります。
加算的バイリンガリズム/減算的バイリンガリズム
加算的バイリンガリズム/減算的バイリンガリズムは、習得程度によるものです。
減算的バイリンガリズムとは、第二言語を習得する中で、第一言語(母語)を一部または全部喪失してしまうことです。
特に家庭で少数言語を話す場合は、そうなるケースがよく観察されます。
例えば、移民の子どもなどは、幼少期は家庭で母語を話していたものの、学校教育を始めると、その移民先の国・地域で話されている多数派の言語の能力の方が強くなることが多いです。
成長するにつれ、母語は聞いたら理解はできるが、産出はできないなど、一部母語を喪失するケースがよく観察されます。特にその母語の社会的地位が低い場合やコミュニティレベルでのサポートがない場合などは、喪失しやすくなるようです。
ちなみに、海外に住んでいると、長期で海外滞在する日本人家庭によく接することがありますが、少数言語である日本語を保持するには多大な努力が必要と感じることは多いです。
子どもの日本語を保持するために、補習校に通ったり、家でも親が子どもの日本語学習に多くの時間を費やしたりと努力されている家庭も多いです。
加算的バイリンガリズムとは、第一言語を喪失することなしに、第二言語を習得するケースです。
加算的バイリンガリズムが推奨されるのですが、特に幼い子どもが加算的バイリンガリズムになるためには、家庭での努力や、コミュニティ・学校などのサポートも必要になります。
まとめ
同時性バイリンガリズム、 後続性バイリンガリズム、 加算的バイリンガリズム、減算的バイリンガリズムの4つの概念について簡単に紹介しました。
バイリンガル教育については以下のような本も出ています。
- Pearson, B. Z. (2008). Raising a Bilingual Child: A Step-by-Step Guide for Parents. New York: Living Language.
↑自らの経験をもとに、子どもをバイリンガルに育てるためのステップについて説明した本だそうです(読んでいませんが)。
日本語ですと、以下の本が有名です。
- 中島和子(2016)『完全改訂版 バイリンガル教育の方法』 アルク.
↑詳しくはこちらをご覧ください。