日本語の複合動詞は数も多く、意味も多様なため、上級学習者でも難しいと感じるものの一つだと思います。
この記事では、国立国語研究所の複合動詞レキシコンという複合動詞検索サイトについて紹介し、このサイトの便利な点を簡単に説明します。
複合動詞レキシコン
サイトのウェブサイトは以下のとおりです(アクセス日:2022年6月20日)
トップページはこのようになっています。
以下のように説明されています。
「複合動詞レキシコン」は,現在の日本語でよく使われる動詞+動詞型の複合動詞(2,700語以上)に意味的・文法的情報を付与し,日本語研究の専門家だけでなく,外国人日本語学習者を含む一般の利用者にも使っていただくことを意図したオンラインデータベースで,様々な検索方法が可能です。
また,個々の複合動詞の見出しから本サイトのコーパス検索システムNLB (NINJAL-LWP for BCCWJ)にリンクを張り,現代日本語書き言葉均衡コーパス (BCCWJ)の例文と関連づけることが可能になりました。求める複合動詞の説明文の右肩にある「NLB」という表示をクリックしてください。(複合動詞レキシコンウェブサイトより引用)
なお、複合動詞は、語彙的複合動詞と文法的(統語的)複合動詞に分類できます。
(詳しくは「日本語の複合動詞の2つのタイプ:語彙的複合動詞と文法的(統語的)複合動詞とその見分け方について」もご覧ください。)
このサイトは語彙的複合動詞のみを扱っています。
便利な点①:複合動詞の例を探したいときに便利
日本語教育に携わっていると、複合動詞の例をたくさん出したいときがあります。ただ、複合動詞を思いつくのは意外と難しいです。
このサイトで便利なのは、「前項動詞から検索」「後項動詞から検索」という検索ができることだと思います。
例えば、「〇〇出す」の複合動詞を調べたい場合、「後項動詞から検索」で「出す」を調べると、「〇〇出す」の動詞が一覧で出てきます。
「飛び〇〇」、「歩き〇〇」のように後に続く動詞がどんなものがありうるのかを調べたいときは、「前項動詞から検索」を使えます。
それ以外にも検索結果を自動詞・他動詞でフィルタもできます。
このサイト自体に例文は少ないのですが、NINJAL-LWP for BCCWJというコーパスと連携しているので、そちらで例文を調べることができます。
なので、複合動詞の例を簡単に見つけることができます。
学習者にとっても、語彙を増やす目的で使うことができると思います。
便利な点②:語構造を理解するのに便利
複合動詞の語構造は複雑です。
「〜去る」という後項動詞を使った複合動詞でも、①「去って行く」という意味の物理的移動を表す場合と、②「完全に」という程度を表す場合があります。(参考:複合動詞レキシコンサイト)。
例えば、「走り去る,逃げ去る,運び去る,連れ去る」の「去る」は、物理移動を表しています。
「走って去る」「逃げて去る」というように言い換えることもできます。この場合、「去る」という元の意味が残っていると考えられます。
一方、「消し去る,拭い去る,葬り去る」などの場合の「去る」は「完全に」という程度を表します。
この時の「去る」は、元の「去る」という動詞の意味が薄れて、補助的な動詞になっていると考えられます。
このサイトでは、前項動詞と後項動詞の意味関係・機能に基づいて、語構造も提示しているので、複合動詞の語構造を知るための参考になります。
まとめと複合動詞の参考文献
このサイトでは国立国語研究所の複合動詞レキシコンというウェブサイトと、その便利な点について紹介しました。
複合動詞について興味のある方は、以下の本に詳しいです。
- 影山太郎 (1993) 文法と語形成. ひつじ書房
- 影山太郎編(2011) 複合動詞研究の最先端―謎の解明に向けて. ひつじ書房
- 姫野昌子(2018) 新版 複合動詞の構造と意味用法. 研究社