昨日の続きです。以下の本の第2章(p. 9-p. 15)についてです。
- Narrog, Heiko. Modality in Japanese: The layered structure of the clause and hierarchies of functional categories. Vol. 109. John Benjamins Publishing, 2009.
モダリティの種類
モダリティの種類については、以下の3つが主流だそうです(p. 9)。
- 認識的(epistemic)
- 義務的(deontic)
- 動的(dynamic)
Narrogはこれに加えて以下の2つも含めています。
- 意志的(boulomaic)
- 証拠性(evidentiality)の一部
認識的(epistemic)モダリティ
認識的モダリティとは、その出来事が事実である可能性についての判断を指します(p. 10)
例えば (p. 10からの引用)、
- This should be the best solution
- She’s probably back home already
この2つの文の場合、shouldやprobablyという叙法助動詞・副詞があるため、「this is the best solution」や「She’s back home already」という命題が事実ではなく、非事実(non-factual)になっています。
義務的(deontic)モダリティ
義務的モダリティとは、義務・許可の表現を指すことが多いです(p. 11)
英語のshouldやmustなどの表現です。
動的(dynamic)モダリティ
動的モダリティとは、能力(状況的能力)の表現を指します。
例えば、I can speak Japaneseなどの「can」は能力を示しているので、 動的モダリティになります。
意志的(boulomaic) モダリティ
英語のwantなどの希望・意志の表現です。
証拠性(evidentiality)の一部
証拠性とは、ある発話の情報源を扱う文法範疇で、視覚、非視覚情報や、推測、推論、伝聞、引用などの表現が含まれます。日本語だと「らしい」「そうだ」「ようだ」などが証拠性の表現に含まれます。
Narrogは、この証拠性のうち、間接証拠のみをモダリティとするといっていました。
Narrogのモダリティの各種類の分け方
Narrog (p.15)は、これらのモダリティの各種類の区別のしかたとして2つの基準を挙げていました。
- 意志的か非意志的か
- 話者指向か事象指向か
意志的なものとして、義務的、意志的、動的モダリティを、非意志的なものとして認識的、証拠性モダリティを挙げていました。
また、話者指向のものとして、義務的、意志的、認識的、証拠性モダリティを、事象指向のものとして動的モダリティを挙げていました。