第二言語習得研究における統計④:Null Hypothesis

統計の自学シリーズです。第4回目の今日も下記の本の第2章の続きを読み、統計を理解するために必要な概念として、Null hypothesisについて学びました(p.41-43) 。

  • Larson-Hall, Jenifer. A guide to doing statistics in second language research using SPSS and R. Routledge, 2015.

Null hypothesis(帰無仮説)

量的研究では、「AとBとは関係がない」「AとBは差がない」などというNull hypothesisがよくつかわれます。このNull hypothesisが使われる理由は、論理的な仮説を肯定するより、null hypothesisを否定するほうが楽だからです。

 

上記の本に出ていた例だと、以下のようなものがあります。

「クラスの前にマッサージをすると学習不安が減る。なので、クラス前にマッサージを受けた学生グループのほうがそうでないグループより不安が低い。」

上記が論理的な仮説になります。ただ、この「クラス前のマッサージをすると学習不安が減る」という論理を検証するには、かなりの数のサンプルを集めて検証しなければならず、大変な作業になります。

なので、実際には「クラス前にマッサージを受けた学生とそうでない学生の間に言語学習不安の違いはない」という「AとBは差がない」というnull hypothesisを立てることになります。

 

そして、「マッサージを受けた学生とそうでない学生の間に違いがあった」ということがわかれば、上記のnull hypothesisが否定されたことになります。

 

実際にはこれによって「クラス前にマッサージをすると学習不安が減る」ということを証明したわけではありません。

わかったのは、「クラス前にマッサージを受けた学生とそうでない学生に学習不安の違いはあった。」ということだけです。ですが、これにより「クラス前にマッサージをすると学習不安が減る」という仮説の信頼度が高まることにはなります。

 

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