私が学部生のことは「Critical thinking」が大切だと口酸っぱく言われた記憶がありますが、Critical thinkingについてもいろいろと議論されているようです。
- Pennycook, Alastair (2004), ‘Critical applied linguistics’, in Alan Davies and Cathie Elder (eds), The Handbook of Applied Linguistics, Oxford: Blackwell, pp. 784–807
Pennycookは批判的応用言語学(critical applied linguistics)で有名な学者ですが、彼が批判的アプローチとして4つのアプローチを挙げていて、頭を整理するうえで役に立ちそうだったのでメモします。
上記の本のPennycook (2004) Critical Applied Linguisticsのチャプターのp.798からの引用です。
①Critical thinking(批判的に物事を捉える)
目的:自分から距離を置いて考える
政治的立場:自由主義・現実逃避(liberal-ostrichism)
理論的背景:ヒューマニズム等
分析の焦点:個人を強調等
短所:差異、不平等や争いにどう対処していいかわからない
②Social relevance(社会との関係性を考える)
目的:言語を社会的文脈から考える
政治的立場:自由主義・多元主義(liberal-pluralism)
理論的背景:構築主義、文脈化(contextualization)
分析の焦点:言語使用の社会的文脈に注目
短所:社会との関係に重きをおいており、その社会の変化には注目していない
③Emancipatory modernism(社会悪からの解放を目指す)
目的:イデオロギーを批判する
政治的立場:ネオマルキシズム
理論的背景:クリティカルセオリー
分析の焦点:批判テキスト分析、言語の権利等
短所:構造的平等に焦点をおいており、個人の主体性や差異が見えづらい
④Problematizing practice (問いかける姿勢を持って実践)
目的:差異と向き合う
政治的立場:フェミニズム、ポストコロニアリズム等
理論的背景:ポスト西洋、anarcho-particularism(「権力を否定して、特定の事象に目を向けていく」ということでしょうか?ちょっとよくわかりません)
分析の焦点:ディスコースに注目、差異を取り扱う
短所:相対主義、非現実主義に陥る可能性、ディスコースに重きを置きすぎる
ちょっとよく分からない用語もありましたが、こうまとめてくれると頭の整理がしやすく、自分の立場を考える上でも参考になって、有難いと思いました。